夜行列車気分を味わえる「島巡り」フェリーの旅 小さな港街から港街へ、海の上の「生活路線」

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本部を出港すると、沖縄本島最北端の辺戸(へど)岬に差し掛かる。以前、那覇から路線バスや村営バスを駆使して行ったことがある。国頭村(くにがみそん)で岬に向かう村営バスの待合室に入ったら、ばあさんが2人寝転がっていた。あのときはいい天気だったが、今日は雨風が強まり、デッキでは揺れとともに雨水が流れている。

11時50分ごろ、与論島に入港する。あいにくの雨だが、デッキから港の海を覗き込むと、その透明度と青さにはっとする。昼になりレストランが開く。フェリーの楽しみのひとつだ。験担ぎでカツカレーを食べる。

次の寄港地は沖永良部、和泊(わどまり)港だ。ところが「まもなく伊延(いのべ)港に入港します」との放送が入った。おや、と思い地図を確認すると、伊延港は南北が和泊港と反対の位置にあり約3km離れている。次の徳之島でも、亀徳(かめとく)港から平土野(へとの)港に変更となった。こちらは2つの港が20kmほど離れているので、乗船する場合は事前に情報を得ていないと対応できないだろう。

フェリー会社のサイトを見直すと「天候により運航時間の変更、抜港や港変更があるので寄港地代理店に問い合わせください」とあった。私もそうだったが、旅行者の場合、予定していた港と違うと戸惑うだろう。これは鉄道では起きないフェリー特有のものなので、特に長距離の場合、あらかじめ気をつけておきたいポイントだ。

寄港地の変更もまた楽しい

けれども島の人は慣れている。待合室の屋根の下に、雨を避けて待つ乗客の整然とした列が見えた。感心して通りかかったスタッフに尋ねると「寄港地の変更はよくあります。出航前には確定しますから、事前に関係各所に連絡を入れています」とのことであった。

時折現れる晴れ間(筆者撮影)

変更で寄港することになった伊延について、船中で調べてみた。西郷隆盛が島流しにあって上陸した場所だという。急に歴史が身近になる。こうして旅に出ると、ふとしたきっかけから新たな発見があり、旅の楽しさが増えていく。

伊延港からは運動着を着た中学生くらいの子どもたちがたくさん乗ってきた。部活動の大会でもあるのだろう。船内が賑やかになって微笑ましい。

と、ここでようやく気がついた。このフェリーは、島の住人が近隣の島に移動するための生活路線なのだと。私は、旅行者の視点からしか見ずに、那覇から鹿児島まで乗り通すことしか考えていなかったのだ。

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