夜行列車気分を味わえる「島巡り」フェリーの旅 小さな港街から港街へ、海の上の「生活路線」

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FC琉球の本拠地、タピック県総ひやごんスタジアムは那覇市街から車で1時間ほどかかる沖縄市にある。フェリーの出港時間は朝7時なので、乗船するのは試合翌々日の8月2日金曜日にした。運行会社はマルエーフェリーである。

長時間乗り通すため、プライベート空間を最低限確保したく「2等寝台B」を選んだ。2等運賃1万4880円に2等寝台B料金2080円、それに燃料油価格変動調整金630円が加わる(運賃・料金などは現在の金額)。

2等寝台Bは2段ベッドでカーテン1枚の仕切りだが、2000円ほどの追加で今はなきブルートレインのB寝台のような空間が得られる。大部屋よりはるかに快適なのでおすすめだ。

乗船前夜は、那覇市内のライブバーでジャズ・スタンダードの演奏を堪能した。翌朝早いのですぐに帰るつもりが、出演者と話が盛り上がり、夜中の1時過ぎまで長居した挙げ句、全員で1台のタクシーに乗り、宿で落としてもらったのだった。こんなことも旅先での思いがけない楽しみである。

雨の中を出航

8月2日は、雷鳴と激しい雨音で目が覚めた。天気予報を見ると、沖縄だけが悪天候であった。ぎりぎりまで様子をみて小降りになった瞬間、足早に宿を出た。

那覇港で出発を待つフェリー(筆者撮影)

港に近づくと、前方に大きな船体が見えてくる。煙突に「丸にA」(マルエー)のマーク。気分が高揚する。待合所に入ると、すでに多くの人々でごった返していた。必要事項を記し窓口で予約番号を伝える。Suicaが利用可能であった。

遠ざかる那覇の街(筆者撮影)

船は「フェリー波之上」。指定された寝台Bは2段ベッドが4つある8人部屋だ。隣の寝台を見ると、ジェフ千葉サポーターであった。同じことを考えたのだろう。顔を見合わせてあいさつをした。

定刻7時に出航。デッキに出ると、小雨の生ぬるい気候に重油の匂いが漂ってきて、エンジンの小刻みな振動が自分の体と共鳴する。灰色の空、ときおり雷の閃光が辺りを明るくする。波の軌跡の向こうに、那覇の街がゆっくりと遠ざかっていく。

出航直後は活気のあった船内も1時間ほど経つと、ロビーにはほとんど人がいなくなった。ときおり、おとなしくしていられない子どもを連れた家族が散歩にきて、窓の外の海を眺めながら何かを話しかけている。

最初の寄港地、本部港には9時に入港する。港が近づくと売店が開く。家族連れなどが続々と乗船してきて再びロビーは賑やかになった。

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