ヤリスHVの登場で「アクア」に活路はあるのか 累計180万台のブランドを生かす独自価値を
昨年の記者会見では「EVはまだ十分な収益が見込めない」とも述べられた。それでも中国やアメリカへ投入する理由は、NEV(New Energy Vehicle)やZEV(Zero Emission Vehicle)など、EVを強制的に導入しなければならない規制に対し、反則金(クレジット)を支払うより負担が少ないとの見解であった。
したがって、国内へのEV導入は、まず超小型EVからで、それも販売店で売り出すかどうか検討中であるという。しかしそれらは、自動車メーカーであるトヨタの発想だ。販売の最前線では、EVを持たない不安は大きい。
自動車メーカーは、何万台という単位で収支を考えるかもしれないが、販売の最前線では、お客様一人ひとりを大事にしなければならない。営業担当は、その大切さを身に染みて知っている。1台を売ることから、何万台という数字につながるのだ。
152万台を販売したブランドの価値
今年の春闘で、豊田章男社長は「YOUを主語にした会話をしているでしょうか?」と、問うた。つまり、トヨタの役員を含め社員が、自分たちのことだけを考えているのではないかと疑問を呈したのである。
「YOUを主語にする」とは、部品供給メーカーなどの都合にも配慮が行き渡っているかを問題提起したもの。同じことが、販売店で営業の最前線にいる人に対してもいえるだろう。「EVを1台も持たない不安の中で商売をしているYOUの発想で、EVの導入を計画しているのか」ということである。
アクアというブランド力のある車種で、EV専用車という強い存在として車名を継承する価値は十分にある。
2011年のアクア導入から今日まで累計販売台数は、国内で152万台に達している。グローバルでは、180万台を超える。
それら消費者の多くは、まったく新しく生まれたアクアというHV専用車に興味を持ち、購入した人たちであり、長年続く車種の代替ではない。ならば、引き続きHVに乗りたい人はヤリスへ行けるし、EVという新たな価値に興味を抱く人はEV化されたアクアに注目するのではないだろうか。
アクアを、HV専用車という従来の価値のまま埋もれさせてしまうのは、あまりにもったいない。トヨタのEVの旗艦として、2代目へのフルモデルチェンジを期待したいのである。走行中の排出CO2ゼロのクルマとして、アクアという車名もお似合いではないか。
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