新型コロナウイルスの感染が欧米各国に広がる中、ヨーロッパでイタリア、スペインに続いて死亡者の多いフランスで、厳しい状況が続いている。1月24日にフランス初の感染者が確認されて以来、4月7日時点で感染者は7万8167人、死亡者数は1万0328人にものぼっている。
「Nous sommes en guerre.(私たちは戦争状態にあります)」
エマニュエル・マクロン大統領は3月16日のテレビ演説で、このフレーズを合計6回も、カメラ目線で繰り返した。
3月17日以来、国民の外出は厳しく制限されている。生活必需品の買い物などの、必要不可欠な外出以外は禁止。外出時は毎回「特例証明書」を印刷して、外出の目的・自宅を出発した時間などを記入して持参しなければならない。散歩やジョギングは、自宅から1キロ以内で1時間以内とされ、違反者には最低135ユーロ(約1万6000円)の罰金が科せられる。対人距離は1メートル以上で、フランス人にとって友愛を示す挨拶の習慣のビズ(頬と頬をあわせるキス)や握手も厳禁だ。
レジス・アルノー氏が本日配信の「コロナで最も変わった国はフランスではないか」(2020年4月8日5時10分配信)で指摘しているように、フランス政府は当初、人の移動を制限したり、市民を追跡するシンガポールや韓国、台湾を非難。ところが、国民はこれらの国のどこよりも踏み込んで国内全土での外出禁止を強いられた。
閑散とするパリの春
パリは閑散としている。メトロ(地下鉄)やバスは大幅に減便された。ベルサイユ宮殿、ルーブル美術館などの観光スポット、セーヌ川の川岸やエッフェル塔の真下から広がるシャン・ド・マルス公園をはじめ、市内の公園は閉鎖されている。レストラン、カフェ、生活必需品を扱う店以外は休業し、託児所、小学校、中学校、高等学校、大学は休校が続く。
例年であれば、今は春のイースター(感謝祭)を家族で祝う楽しいシーズンのはずだった。現地で生活する人々は、どうしているだろう。人々に話を聞くと、厳しい状況とともに、国民が一丸となって団結し、助け合いながら危機を乗り越えようとする「solidarité(ソリダリテ)」の精神があった。
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