なぜ「トヨタ×NTT提携」、実は「必然」な深い理由 豊田章男がねらう「GAFAとは異なる」対抗軸
近年、半導体の集積度が約2年ごとに2倍になるとする「ムーアの法則」の限界が指摘されているが、スマートシティプラットフォームを構築するには、膨大なデータをリアルタイムに処理する必要がある。従来の電気によるデータ処理では、対応しきれない。
NTTが取り組むIOWNは、発信元から受信先まですべての通信を光でつなぐオールフォトニクス・ネットワークによって、現状よりもはるかに高品質・大容量・低遅延、かつ低消費電力の通信を可能にする。
加えて、現実世界を構成するモノや人などをサイバー空間に再現し、それらを組み合わせて高度なシミュレーションを行うデジタルツインコンピューティングなどによって、未来予測が可能になるという。
ただし、NTTは、データの収集から蓄積、分析、最適化などの技術は持っているが、データを生み出すハードウェア自体はほとんど持っていない。
その点、トヨタはハードウェア、すなわちリアルの世界を持っている。しかも、具体的なまちづくりの構想をスタートさせている。「ウーブン・シティ」がそれである。
ウーブン・シティの可能性
豊田氏は今年1月、アメリカ・ラスベガスで開催されたCES(デジタル技術見本市)で、静岡県裾野市にあるトヨタ自動車東日本の東富士工場の跡地に、ウーブン・シティと呼ばれるスマートシティの建設を発表した。
「日本の東富士にある175エーカーの土地に、未来の実証都市をつくります。人々が、実際に住んで、働いて、遊んで、生活を送りながら実証に参加する街です」
と、豊田氏は語った。着工は2021年の予定だ。
ウーブン・シティは、新たな商品やサービスの商品化を見据え、実証実験を進めるリアルの場だ。自動運転のEV「イーパレット」や小型EVだけでなく、ドローンや空飛ぶタクシー、ラストワンマイルの移動から長距離輸送、走る歓びを感じられるクルマから完全自動運転車に至るまで、多様なモビリティが行き交う未来の街を想定している。
トヨタの従業員やプロジェクト関係者など、まず約2000人がウーブン・シティに実際に暮らし、生活データの収集を行う方針だ。その際、ブロックチェーン技術などにより、データの主導権を、あくまでも市民や自治体が握る形にするのが特徴だ。
スマートシティプラットフォームの成否のカギは、AIの分析対象となるビッグデータをいかに収集し、活用するかにかかっている。人やクルマの移動はもちろん、どこで何を買い、電気や水をいつ、どれだけ使い、健康状態はどうかなど、人々の生活からはビッグデータが生み出される。
その中からどのデータをピックアップして収集、蓄積し、分析して活用するか。ノウハウの構築には、自社だけでなく、さまざまな業界の知見を必要とする。
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