積水ハウス元会長「株主提案は復讐じゃない!」 元会長と現役取締役が語る株主提案の理由とは

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和田:今となってはね。だが当時はあきれて何もできなかった。

こうして、のこのこ出てくるつもりはなかった。私も長く(経営者を)やってきたし、これで会社がいい姿になってくれればもういいかと思っていた。だが、全然違っていた。(現役の取締役である)勝呂君からいろいろ相談を受けたところ、会社はどんどんおかしくなっている。

(私が取締役として経営に)復帰するのが目的ではない。そんなことはさらさらない、恨むんだったらもっと早くやっている。

積水ハウスは好きな会社、大きくしてもらった会社だ。ここに残る後輩が人生の最後まで楽しくいけるような会社にしたい。

日本のコーポレートガバナンスを変えたい。それで、のこのこ出てきた。新聞は復讐だという、それだったらもっと早くやっている。面白いから書くと思うんだけど。

――実際、世間的には単なる権力闘争にも見えます。

和田:権力闘争だったら、(株主提案が可決され取締役となったら)きっと長いことやるだろう。だが、私は1年で(取締役を)辞めるつもり。正しい会社に戻したいだけで、権力闘争だとはさらさら思っていない。

勝呂:社員には地面師事件の説明がなく、疑心暗鬼になっていて、モチベーションが上がっていない。全体的に上をみて仕事をしていて、ピリピリしている。活気がなく、積水ハウスらしくない。全体のイメージとして社員の士気や活気が全然ないことに危機感を感じる。

社外取締役は過半数必要

――社外取締役の数が少ない、上を見て仕事をする社風というのは、2人が取締役時代から続いているのではないでしょうか。

和田:どこの会社でも社外取締役は2~3人もいれればいいと考えている。だが、多数決の論理でいけば過半数を占めないとダメだ。(今の積水ハウスの経営陣は)社風を完璧に壊しにかかっている。もともとは現場が強い会社だったが、中央集権にしようとしている。

勝呂文康(すぐろ・ふみやす)/1957年生まれ。1982年積水ハウス入社。2008年に執行役員就任、2014年に取締役、2016年から専務執行役員(撮影:梅谷秀司)

勝呂:経営がすべて財務目線になった。財務戦略にマッチしているか、そうでないかが強くなった。それも大事だが、事業の成長性、可能性なども大事だ。(国内外で大型不動産などの)財産を売っているからROA(総資本利益率)などの経営指標はすごくよくなっている。ただし、これは長期にわたって稼げるものを短期的に売っているからで、よくなるに決まっている。

――トップの仕事は後継者を育てること。和田さんは、後任として阿部さんを選んだことに対する責任を感じますか。

和田:普通こうしたことが起きたときは、自分を恥じて辞める。(報告書の全文開示を拒むことに)なんで執念を燃やしているのか、犯罪でもしているのではないか。今となっては強烈な任命責任を感じている。ある意味で私はお人よしすぎた。

――勝呂さんは現役の取締役として、株主提案の提案者になっています。今の立場や覚悟は?

勝呂:ざっくばらんにいえば、(社内の立場は)非常にきつい。だが、取締役を増員する、(一連の経緯に)開示請求をするといった手立てだけではどうにもならない。ここまでしなければならなかったということを理解してほしい。

私たちは株主提案として「自分たちで次の経営をしよう」と言っている。今の経営陣に対して(アクティビストのような)要求をして引っ張り出すのではないということを申し添えておく。

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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