積水ハウス元会長「株主提案は復讐じゃない!」 元会長と現役取締役が語る株主提案の理由とは

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和田元会長(写真右)は今回の株主提案について「ガバナンスを変えたい。復讐だったら、もっと早くやっている」と述べた(撮影:梅谷秀司)
2017年、東京都品川区の土地購入をめぐって詐欺師集団「地面師グループ」に約55億円をだまし取られた積水ハウス。2018年にはこの土地購入取引を推進した阿部俊則社長(現会長)の責任を追及して退任を求めた和田勇・前会長が、逆に実質的な解任に追い込まれた。
それから2年、和田氏と勝呂文康取締役(2020年4月23日退任予定)が2月17日に会見を開いた。そこでは、阿部氏ら経営陣がこの事件の調査報告書の全文開示や事実解明を拒み、社内で「もの言えぬ状況」を作り出していると指摘。和田氏らは、過半数が独立社外取締役からなる新たな経営体制を求める株主提案を行うと発表した。その取締役候補には和田氏と勝呂氏の名も含まれている。

定時株主総会は4月23日に行われる。株主提案の狙いはどこにあるのか、2人に話を聞いた。


――今回、株主提案に至った背景は?

和田:(約55億円だまし取られたことについて)地面師事件ととらえると、積水ハウスが被害者になってしまう。しかし現実はそうではない。積水ハウスはだまされた被害者ではない。

(株主提案者と協力関係にある「Save Sekisui House」で公開されている調査報告書の全文によると)ペーパーカンパニーと取引したり、支払いに預金小切手を使ったり、取引を止めるように内容証明郵便をもらったりしている。(阿部・現会長らが)自分たちでどんどんハードルを下げて取引をしにいった。

積水ハウスが(犯人らに)支払ったお金がどこにいったかさっぱりわからない。アメリカではマネーロンダリングの典型例だと言われている。

日本企業のガバナンスは甘すぎる。アメリカでこうしたことがあれば刑務所行きだという。事件(の真相)を隠しているうちに、にっちもさっちもいかなくなる。

会社が未来永劫に繁栄し続けるにはガバナンスが大事だ。そのためには問題を明らかにして透明性を確保することが必要だ。今回は株主提案の候補者11人のうち、圧倒的過半数の7人が社外取締役。何かおかしいことがあったら(社長の)クビを取れる仕組みにしないと緊張感がない。

社会通念から逸脱している

勝呂:投資家を訪問すると、一様に「おかしいよね」という。ただし、「(地面師事件で騙されたことは)違法ではないから不正とは言えないのでは」とみている人が意外に多い。不正かの判断も含め、内容の開示は会社の裁量にあると考える人もいる。

私たちは「これは不正だ、違法だ」とか、法律的な論争をするつもりはない。私たちが問題にしたいのは、「積水ハウスは会社の使命や社会通念に照らして、意味のある事業をしているが、今回はそうしたものから逸脱している」ということだ。

裁判上は(積水ハウスは)被害者という立て付けで進んでいると聞いているが、積水ハウスは被害者というだけでなく、不正にほかならないと感じている。株主のお金を預かっている責任として、何が起きたか、(経営陣が)説明をする義務がある。

(地面師事件の調査報告書には)取締役にも責任があるとしている。取締役は自分たちで決めて給与の返上をしたが、それでは済まないレベルだ。

にもかかわらず、(調査報告書の概要発表で済ますという形で)隠蔽をした。これでガバナンスの姿がねじれてしまった。かつて中国では新幹線事故の証拠を地中に埋めてしまったが、今回の地面師事件も証拠を埋めようとしている。(株主に)きちっと説明をして、理解をしてもらって判断を仰ぐべきだ。

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