(※本来複数の製薬企業から同一成分の薬が発売されている際の表記では、成分名のファビピラビルを使うのが一般的である。しかし、日本ではアビガンの商品名でその名前が取りざたされているので、以後は「ファビピラビル(アビガン)」と表記することをあらかじめお断りしておく)
中国政府が発表した研究では、ファビピラビル(アビガン)を新型コロナウイルスの感染患者に投与し、別の抗ウイルス薬アビドールを投与した群と比較した。これもランダム化比較試験だ。
この研究では、ファビピラビル(アビガン)群の71%の患者が回復し、対照群の56%より統計的に有意に優れていた。解熱時間は2.5日と4.2日、咳が治まるまでの時間は4.6日と6.0日で、いずれもファビピラビル(アビガン)投与群のほうが良好だった。
また、同日には、深圳第三人民病院で新型コロナウイルスによる肺炎患者を対象とした臨床試験の結果も報告された。ファビピラビル(アビガン)とαインターフェロンを併用したところ、αインターフェロン単独、αインターフェロンとカレトラの併用より有効であったという内容だった。
医薬品の開発では、規制当局は独立した2つの臨床試験で結果が再現されることを求めるのが通常だ。ファビピラビル(アビガン)の有効性は確立したと言っていい。
「中国のデータは信頼できない」の誤解
中国の臨床試験の結果が発表されると、「中国のデータは信頼できない」と主張する人もいる。彼らはあまりにも世界の現実を知らない。
創薬の主薬はメガファーマだ。彼らは世界中で激しい競争を繰り返している。規制が緩く、人権意識が希薄な中国は治験の格好の場である。優秀な人材を、アメリカの製薬企業の中心地であるボストンの半分から3分の1程度の給料で雇用できることも大きい。
また、中国の医薬品市場は急成長している。2018年の医薬品の市場規模が1323億ドル(約14兆3000億円)で、アメリカの4849億(約52兆3500億円)ドルに次いで世界第2位だ。年間成長率は7.6%で世界1位だ。
世界中の製薬企業が中国での臨床開発に力を入れている。2018年に世界で始まった治験は全7607件だが、中国は1969件で、アメリカ(2945件)についで2位だ。前年比57%増の急成長ぶりだ。今回、中国でハイレベルの臨床試験が迅速に遂行されたのは、このような背景がある。
話をファビピラビル(アビガン)に戻そう。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら