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「相鉄線ウェブムービー」が大成功した深い理由 「役に立つ15秒のCM」よりなぜ響いたのか

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  • 水野 学 クリエイティブディレクター、クリエイティブコンサルタント、good design company代表
  • 山口 周 独立研究者・著作者・パブリックスピーカー、ライプニッツ代表
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山口:テレビCMは15秒の枠に縛られて世界観を伝えられなくなってしまいましたが、それでもBMWのように長尺の広告を今も出し続けている企業もある。

ウェブだともっと自由で、最近、すばらしいと思ったのは、シャネルがYouTubeで上げていた動画。2019年に亡くなったカール・ラガーフェルドがカメラマンなんです。これはシャネルだからできるというわけじゃない。

既存のテレビCMは15秒の枠に縛られているうえに莫大なお金もかかるけれど、ウェブではコストフリーで表現の場が広がっている。製作費はもちろんかかりますけど、ストーリーを持っている人にとっては、とてもいい時代です。

逆にいうと、15秒で伝えられることしか考えてこなかった人は、「5分あげるよ」と言われても、伝えられることがないので困ってしまうでしょうね。

過渡期を迎えている広告

水野:そうですね。広告はいま、過渡期を迎えていますね。情報があふれているから、みんな自分にとって価値がない情報は脳内でシャットアウトする癖がついている。出稿量の多いCMですら、「見た記憶はあるけど、肝心の『何のCMだったか』は覚えていない」という現象が増えています。でも反対に、自分にとって「意味がある」と思ってくれれば、自ら検索してわざわざ情報を取りに来てくれます。

僕が手がけた相鉄さんの話ですが、2019年11月末の都心直通にむけて、「テレビCMをつくりたい」と相鉄さんから言われたんです。

けれども僕は「この予算でテレビCMを打っても無駄になるだけだから絶対にやめましょう」と止めました。それで、その分の予算で『100 YEARS TRAIN』というタイトルの約3分半のウェブムービーをつくったんです。結果、大成功でした。

山口:二階堂ふみさんと染谷将太さん主演で大正・昭和・平成・令和それぞれの時代の電車内が舞台の物語ですね。

水野:はい。音楽は熱烈なファンの多い「サカナクション」と「くるり」の楽曲を音楽プロデューサーの冨永恵介さんがマッシュアップし、yuiさんとミゾベリョウさんに新たに歌っていただきました。

といっても細部は、映像制作を依頼した電通のクリエイティブ・ディレクター中村英隆さんと映像作家の柳沢翔さん率いるチームに全面的にお任せしました。

僕がブランド監修およびクリエイティブ監修としてやった最も重要な仕事は2つ。1つは「テレビCMをやらない」こと。これを理解していただくまで、なかなか……。

山口:大変そうです(笑)。

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【もう1つの重要な仕事】

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