婦人服レリアン「下請けいじめ」に猛反発のわけ 公正取引委員会と真っ向対立の複雑背景

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レリアン側は、取引先が自発的に企画した商品を売る「販売委託」の取引であり、レリアンが仕様を指定する製造委託には当たらないと主張。これに対して公取委は、レリアンブランドとして商品を製造させていたことや、「踏み込んだ意見やアドバイスをして、それを基に下請け事業者が商品の見本を作り直すなどしていた」(下請取引調査室の担当者)ことを理由に製造委託と認定した。

公取委の判断に対し、レリアンの小谷社長は「ウィンウィンで成り立ってきたビジネスモデルだったが、(下請法)違反と認定された。本当にショックだ。下請けいじめでも、優越的地位の乱用でもなかった」と強調する。

業界内ではレリアンに厳しい声

今回の勧告を受け、ブランドイメージへの影響の長期化を避けるため、レリアンは返品・値引きなしの取引形態に変更。違反と認定された代金の返済も順次進める方針だ。ある下請けの首脳は「返品なしの契約になれば、レリアンは在庫を抱えることを恐れて確実に売れる商品だけに仕入れを限定する。取引数量は大幅に減ってしまう」と先行きを危惧する。

2月19日に開いた記者会見で、取引先とは共存共栄の関係を築いてきたと主張したレリアンの小谷建夫社長(右)(記者撮影)

レリアンと取引先との関係は双方の合意の下で長年続き、その結果、多種多様な商品が並ぶ独自の売り場を実現してきたことは事実だ。ある小売り企業幹部はレリアンの主張に一定の理解を示したうえで、「長年築いてきた商慣習の是非を外部から法律で一括りに判断しようとすると、ビジネスの自由度を阻害しかねない」と語る。

もっとも、アパレル業界内では今回の一連の展開に対して厳しい見方が多い。アパレルOEM会社の幹部は「昔は普通だった返品も値引きも、最近は特に上場企業との取引で大きく減った。持ちつ持たれつの関係だったにしろ、コンプライアンスが重視される時代に伊藤忠の子会社でありながら、『返品しても下請けいじめではない』と主張するのは違和感がある」と語る。

別のアパレル業界関係者も「レリアンのタグを付けた商品はレリアン以外で販売できず、返品後はタグを外す加工をしたうえで、底値で転売する道しか残されない。いくら高値で取引していると言っても、それをわかって返品する行為は公取委に勧告されて当然」と指摘する。

レリアンへの依存度の高い下請けの間では、返品なしの取引への変更で仕入れ数量が減ったり、売り場が陳腐化したりすることを懸念する声もある。一時的な取引量の落ち込みは不可避とみられるが、前出とは別のアパレル業界関係者は「レリアンが本当に売れる商品の必要量を見極めたうえで仕入れを行えば、結果的には返品や値引きが減り、商品一点一点の利益率も上がるようになる。それが本来の商売のあるべき姿だ」と話す。

衣料品の海外生産が9割を超える中、レリアンブランドの商品の7割は今も国産が占める。レリアンの小谷社長は「日本のメーカーの新しい商品を世に出す役割を担っていたという自負がある」とも語った。取引先との特殊な関係の下で品質の高い商品を作り出し、優良顧客をつかんできたレリアン。新たな取引形態に改めた今、魅力ある商品を世に出し続けられるか。これから真の販売力を問われることになる。

真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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