婦人服レリアン「下請けいじめ」に猛反発のわけ 公正取引委員会と真っ向対立の複雑背景
下請法は、立場の弱い下請け事業者の利益を保護するための法律だ。その違反行為があったにもかかわらず、なぜ親事業者と下請け業者がそろって「下請けいじめではない」と声を上げる事態となったのか。背景には、レリアンと取引先との長年にわたる特殊な取引関係がある。
レリアンは1968年に創業。主力のレリアンブランドは、品質やデザイン性の高さから中高年女性を中心に多数の優良顧客を抱える。同じ百貨店向けの衣料品ブランドを展開するオンワードホールディングスや三陽商会などと異なり、レリアンは社内に製造機能を持たない。レリアンブランドについては社内に専属のデザイナーもパタンナーもおらず、商品の大部分を数十年にわたって取引してきた下請け13社から仕入れている。
レリアンと公取委の対立点
レリアンは創業当初、一部の商品を除き、これらの下請けが企画・提案した商品を下請け各社のブランドのタグを付けて販売していた。レリアンの知名度が上がるにつれ、レリアンのタグを付けたほうが消費者へ訴求しやすいと考えた下請けからの要望を受け、レリアン以外では販売しないことを条件に、下請けが企画した商品をレリアンのタグで売ることを認めた。
レリアンは下請けに約1年先のトレンドなどについて説明を行い、下請けはその情報に沿って商品を企画。レリアンは店頭情報を基に、「この部分はこう改善したほうが売れる」などと下請けにアドバイスを行う。最終的に絞り込まれた商品がレリアンのタグを付けて店に並べられる。
納品時にレリアンは下請けに商品代金を支払う。レリアンによれば、値引きや返品の条件をつける代わりに、業界内で一般的な買い取り価格よりも25%ほど高い価格で仕入れていたという。
返品条件付きの取引により、レリアンは在庫リスクを回避でき、下請けにとっては自社が企画した商品をできるだけ多く置いてもらうようレリアンに強く要請できる利点があった。過去にレリアンと取引があったアパレル企業の社員は「レリアンは多品種の商品を売りさばく販売力が強みで、その販売力の高さに期待して取引を行うメーカー(下請け)が多かった」と振り返る。
レリアンと公取委の見解が大きく対立したのが、この取引が下請法の規制対象となる「製造委託」に該当するかどうかだった。製造委託とは、物品販売などを行う事業者が規格やデザインを指定して、他の事業者にその物品の製造・加工を委託すること。製造委託に該当すれば、不良品以外の返品や値引きは下請法違反となる。
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