第4回 無用なケンカを回避するこんな方法

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「Youメッセージ」でなく、「Iメッセージ」を

怒りの感情には、様々な性質がある。
 それらの性質のいくつかを知っておくことは、人間関係の距離を測るうえで、とても有意義だ。
 怒りは「第二次感情(セカンダリー・エモーション)」といわれている。
 怒りの感情が湧いてくる前には、第一次感情(プライマリー・エモーション)が潜んでいる。
 第一次感情はネガティブな要素が大半だ。
 例えば、不安、ストレス、悲しみ、苦痛、身体的な辛さ、妬み、自分の弱さ、絶望感、悲観などである。

 怒りの感情は、心のコップから水が噴き出すことを説明したが、第一次感情の不安やストレスなどは、先ほど用例した水のことである。
 不安やストレスがコップ内にたまり過ぎると、いつか怒りへとつながってしまう。
 第一次感情と第二次感情の関係について、具体的に確認したい。

 ある独身カップルの話だ。男女とも29歳。つき合い始めて5年が経過している。
 男性は仕事が忙しく、平日は帰りが遅く、休日出勤することもしばしばだ。
 女性はデートもままならない生活が不満だし、そして結婚のことを彼がどう考えているのかがとても気になっている。
 ある日曜日、彼が久々に休みをとれることが嬉しくて、彼女は遊園地のペアチケットを用意した。
 しかし、彼は不機嫌な顔をしている。そして「そんな所に行かねえよ」と悪態までつく始末である。
 彼の悪態の原因、つまり第一次感情は「疲れているので、ゆっくり休みたいことをわかってくれない『悲しみ』」だ。
 こうなると、彼女も悪態で応戦してしまいがちである。「なんであなたはそう自分勝手なの!」と、怒鳴り返してしまう。
 彼女が怒鳴った原因、第一次感情は「デートできない『寂しさ』、結婚するつもりがあるのかという『不安』」なのである。

 このカップルは、第二次感情である怒りをぶつけあってしまった。
怒りの感情をぶつけあっても、相手は聞く耳を持たなくなり、ケンカが深まるいっぽうであろう。
 無益なケンカを避けるには、どうすればよいか? それは相手の第一次感情を観察することだ。
 相手の第一次感情を理解し合うことで、お互いを思いやる気持ちが湧いてくる。
 そして、自分の第一次感情を相手の第二次感情を思いやりながら伝えるようにしよう。
 怒っているときの会話は「YOU(あなた)メッセージ」になっていることが多い。「あなたが○○だ」と相手を評価するような言い方は相手に伝わりにくいものだ。「I(私)メッセージ」で自分の気持ちを率直に話すことを意識しよう。
 このカップルのケースならば、
 「僕はとても疲れているから、外へ出かける元気がないんだ。でも君に寂しい思いもさせたくないから、今日は僕の部屋でゆっくりしないか」
という言い方ならば、彼女もムキにならず、冷静な応答をしてくれるはずだ。

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