「コロナ経営不振」は内定取り消し理由になるか 内定者が不利益被らないために政府も対応
内定取り消しは労働契約の解約にあたる。労働契約法16条は「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」としている。
この規定は内定取り消しにも適用され、客観的合理性と社会的相当性の2つがなければ取り消しは法的に無効となる。たとえ解約権を留保した労働契約であっても、その解約権を濫用することは否定される。
最高裁昭和54年7月20日大日本印刷事件判決では適法な「内定取消事由は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認することができるものに限られる」と判示している。
一般論として、成績不良による卒業延期、健康状態の著しい悪化、経歴の詐称などの重大な虚偽申告の判明、重大な事件による逮捕処分といったケースであれば、内定取り消しに合理性・相当性が認められると考えられる。採用内定取り消し事由として最も典型的なものは採用内定者が卒業できないことだ。
コロナ問題による経営不振で内定は取り消せるか?
問題は今回の新型コロナウイルス問題のような経営不振を理由に内定取り消しができるかだ。経営不振による内定取り消し問題で中高年者の記憶に残っているのは1997年の山一証券経営破綻による大量の内定取り消しだろう。リーマンショックや東日本大震災のあとも問題になった。
まず、経営不振による内定取り消しは、内定を受けた学生側には非のない事情によるものだ。法律に定めはないが、過去の判例を通じて「整理解雇の4要件」というものがある。整理解雇とは、経営不振や事業縮小など、使用者側の事情による人員削減のための解雇をいう。これを行うためには原則として、4つの要件が満たされていなければならない。内定取り消しについてもこの原則が適用されると解されている。
1.人員整理の必要性
どうしても人員を整理しなければならない経営上の理由があること。
2.解雇回避努力義務の履行
解雇を回避するためにあらゆる努力を尽くしていること。
3.被解雇者選定の合理性
解雇するための人選基準が評価者の主観に左右されず、合理的かつ公平であること。
4.解雇手続きの妥当性
解雇の対象者および労働組合または労働者の過半数を代表する者と十分に協議し、整理解雇について納得を得るための努力を尽くしていること。
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