ワークマン、朝昼晩で「変身」する新型店の全貌 プロの職人と一般客が共存できる店舗とは

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他方、ワークマンの社内ではワークマンプラスへ既存店の改装を進める過程での葛藤もあった。「プロのお客さんの中には、ワークマンプラスの(カジュアル感を打ち出した)雰囲気を嫌がる人が一定数いた」(土屋専務)。

ここ数年のワークマンのヒットの仕掛け人でもある土屋哲雄専務取締役は「一般客と(建設作業員など)従来のプロ顧客が共存できる店を作る必要があった」と語る(撮影:尾形文繁)

一般客の需要が急増しているとはいえ、現在もワークマンの売り上げの6~7割はプロの職人らが占める。その職人にとっては、商品の素材感など細部もチェックしやすい白い照明の下、作業着や手袋、安全靴などが店内の前面に並べられた通常のワークマンのほうが使い勝手がよい。ワークマンプラスへの転換が進むと、「今までのワークマンが変わってしまう」との不安が募ったのか、ツイッター上で「悲報」と嘆く既存顧客の投稿が散見されたという。

一気呵成にワークマンプラスへの改装を進めると、プロ職人の離反を招く可能性がある。そうした懸念の中で、一般客とプロ職人の双方が利用しやすい店舗設計を考え抜いた結果、時間帯に応じて2つの顔を使い分ける今回の新型店の出店に至った。

追いつかないインフラ整備

飛ぶ鳥を落とす勢いのワークマンだが、課題として残るのが、急拡大に伴うインフラの整備だ。ここ数年は店舗数や1店当たりの売り上げが急増し、取り扱う在庫量が膨大になった。そのため、既存の3つの自社倉庫はキャパシティが限界になりつつある。倉庫の新設を検討するものの、完成までには数年かかるうえ、ドライバー不足を背景とする配送専用トラックの確保も悩みとなる。今後は、倉庫の再配置を含めた物流網全体の設計を早急に練り直す。

時間帯によって内装や看板が変わるワークマンの新型店の案内板には、通常のワークマンと新業態のワークマンプラス両方の名前が入っている(撮影:尾形文繁)

また、アウトドアやスポーツでの利用を意識した商品の拡充でアイテム数が増えていけば、今まで以上に在庫管理の精度向上が求められる。ワークマンは目下、過去の販売動向やトレンドに基づいてアイテム別の最適な在庫量を予測できる自動発注システムの導入を進めている。「年内には全店に導入できる見込み」(土屋専務)。拡大路線を突き進む中で、システムを活用しつつ、売れ残りを最小限に抑えるための効率的な在庫管理を徹底できるかが試される。

国内の作業服市場は建設作業員らの高齢化や減少により、中期的には縮小が見込まれる。そこから一歩踏み出し、一般客の需要をつかんだワークマン。新型店の運営をうまく軌道に乗せ、拡大に伴う課題を乗り越えた先には、もう一段の成長が見込めそうだ。

真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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