「株は今こそ買い」と言う人の「根本的な間違い」 新型コロナ暴落で株は本当に安くなったのか

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したがって、いったん暴落を始めた株価は、普通は、妥当な水準を通り過ぎて、暴落を続け、妥当とは到底いえないところまで下がって、そこから(底から)あがってくる。だから、今回の暴落がどこまで続くか、見極める必要があり、セオリー的には「慎重に底打ちを確認してから、底では買えないが、はっきり暴落局面が終わったところから買い始めて間にあうので、そこまで待つ」のが安全策だ。

もし底で買いたければ、いまから恐る恐る少しずつ買い始めるのも、戦略としてありうるが、やはり焦ることはない。

2つ目に、下落幅を、理論とまでは言わなくとも、論理的に説明すると2つの要素に分けられる。PERが20倍から10倍まで下振れるとすると、その倍の振れはセンチメントによる振れだ。

さらに、PERが20を超えているようなときは、バブル的であり、実体経済も過熱している場合がほとんどである。だからPERの元になる企業の収益(earnigs)も長期的に持続可能な水準よりも高くなっている場合がほとんどである。したがって、センチメント的にPERが20から10に下がる、という「センチメントの要素」と、「企業収益が半分に落ちる」、という2つの要素があって、株価は最大4倍まで振れるのだ。

「株は安すぎる」とはまだ言えない

実際には、NYダウやS&P500などの市場の平均株価指数が4倍まで振れることはなく、2倍ぐらいが一般的になる。だが、日経平均であれば約3万8000円台から約8000円まで、約5分の1になった歴史的なバブルもある。「今回はそこまで異常なバブルではなかったから、半分ぐらいがせいぜいではないか」、というのが私の個人的な感触だ(雑だが)。

NYダウは最大下がって、1万5000ドル、日経平均は1万2000円あたりだが、日経平均の方が、バブル度合いが小さいので(あまり日本株には成長期待もないといわれて、人気がそこまでないのでバブルになりにくい)1万4000円から1万5000円ではないか。

そういう感覚で私は、今の水準を分析しているし、感覚的に捉えている。

だから、まだ「株は安すぎる」とはいえないのである。

小幡 績 慶應義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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