コロナショックがもたらす「上場延期」の深刻度 リストラ進み、M&Aによる業界再編も進むか

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もともと、年初までは良好な株式市場の環境が終わることを見越した「赤字の駆け込み上場」が増加するとの観測が強かった。

野村証券によると、2019年の新規上場企業による市場からの資金調達総額は3249億円で、郵政3社やソフトバンクの大型案件により金額が膨れ上がった2015年と2018年を除いても、2014年(1兆0472億円)の3分の1以下の低水準にとどまった。

2019年の新規上場企業数は86社とこの3年間ほぼ横ばいだったが、赤字での上場企業数は過去10年で最多の19社。とりわけ、2019年はIT企業の赤字上場が前年の2倍と急増したことも特徴だったという。

赤字上場が増加する背景には、世界的な金融緩和の流れが長く続いたため、ベンチャーキャピタル側が出口戦略として、市場が冷え込む前に持ち株を売り抜けたいとの思惑がある。

公募売り出し額が縮小傾向にあるのは、事業を立ち上げて間もない段階で上場する傾向が増えていたためだ。今回のコロナショックで株価だけでなく消費の減退などにより世界経済全体が冷え込むことが予想される。そのため、当面は新規公開(IPO)の動きは収まるだろう。

リモートワークで露呈した社員の問題点

コロナショックの影響は株価下落だけにとどまらない。雇用の不安定化をもたらす要因に急浮上している。

「リモートワークの実施で社員の成果の差が露骨にわかるようになったので、リストラをしやすくなった」と先のベンチャー社長。コロナ対策で多くの企業が在宅でのリモートワークを進めた結果、「ただいるだけの人」「外回りと称してサボる人」がはっきりしたという。

この社長は「新規上場が延期できた副産物というわけでもないが、上場のために雇ったスタッフを解雇して人件費を浮かせれば、中長期的にはキャッシュが増える。それを元手に株価が下がった優良企業に対してM&Aをすれば逆に企業価値が上がる」という戦略まで立てていると打ち明ける。

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