NYダウはまだ「下げ止まった」とは言い切れない もはや1日1000ドル超動くのは当たり前に

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縮小

そこで問題になるのが、マーケットメーカー(株式なら証券会社が中心。「売り気配」と「買い気配」を提示し、相対取引を基本に売買を成立させる業者)のリスク許容量である。

かつてその役割は、債券はウォール街の大手金融機関が担った(プライマリーブローカー)。そしてシカゴの先物・オプション市場では、「ローカルズ」とよばれる、肝の据わったすごい個人投資家群がいたものだ。

だが、リーマンショック後、ウォール街の金融機関には、FEDとバーセル3の規制(主要国の金融監督当局が設定した規制のこと)が入った。さらに救済によって金融機関のバランスシートは改善し、QE(量的金融緩和)で資金量も潤沢になったが、「ボルカールール」で自己ポジションを規制された金融機関はマーケットメーカー業務を縮小した。その代わりに主役になったのが、いわゆるハイフリークエンシー(超高速売買)業者である。

株よりも債券の流動性が心配

彼らは、元をただせばシカゴの立会場にいたローカルズの中で、才覚のある者がいち早く理系の才能を取りいれ企業化して成功したケースや、全く金融とは無縁だった若い理系の天才たちがビットコインを操るように、ETF(上場投資信託)を駆使して、社債のバスケットなどの新手のマーケットを生み出す自由な発想を持った開拓者である。

その市場は、国債の利回りが消滅した投資家には貴重なものだったが、今回のようにボラテリティー(変動率)が急騰すると、資金力に乏しい彼らのビット・オファー(買い・売りの提示価格)は極端に開き、マーケットメーカーの使命を果たさなくなる。

当然だ。彼らには長年ニューヨーク(NY)のプライマリーブローカーが背負ってきたオブリゲーション(義務)がない。そんなことなどお構いなしとばかりに、AI(人工知能)がビット・オファーを叩きにいけば、1日の変動の値幅が1000ドル超となるのはもはや驚く現象ではない。

この状況では、前述のS&P500の2500もサポートとしても盤石ではない。今心配なのは、株よりも債券の流動性である。株先と相反する債券先物の市場が枯渇すると、債券は想定を超えて買い進まれ(金利低下)、結果、株のサポ-トも機能しない。

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