「会社四季報」春号に見るコロナウイルスの損得 テレワークやクリーンルームなどに追い風も

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コロナ騒動は全てがマイナス面ばかりではない。テレワークや時差通勤など、日本のオフィスワーカーの働き方そのものも、変えつつある(写真:UPI/ニューズコム/共同通信イメージズ)

いつ夜は明けるのか━━。

3月16日(月)に発売された『会社四季報』2020年2集春号は、まさに新型コロナウイルス一色の内容となった。1月中旬から3月上旬の編集期間にかけて、事態は日を追うごとに深刻化。当初は中国に生産拠点がある製造業や中国向け売り上げが大きい会社への影響が懸念されたが、国内で市中感染が確認されたことから内需の幅広い業種にまで影響が広がり、記事内容の修正作業に追われた。

春号では新型コロナウイルスを「新型肺炎」と表記。その言葉が使われたのは661社と、掲載している上場会社のうち、6分の1超を占めた。そのほとんどはマイナスの影響を受けるが、中には感染症向けクリーンブースやパーティションを手がける会社、テレワーク対応のためにPC環境構築サービスを展開する会社など、業績にプラス影響があるケースも散見された。

注目すべきテーマは「1人当たり売上総利益」

新型コロナウイルス禍に関し、『会社四季報』春号では、4~6月期の間に混乱が落ち着く前提で業績予想を組み立てている。全産業の今期予想営業増益率はマイナス9.3%と、3カ月前の新春号のマイナス6.3%からマイナス幅が拡大した。ただ、ハードルが一段下がったことにより、来期予想営業増益率は9.9%増と、新春号の8.6%増から上昇。各企業によって事情は異なるだろうが、全体としては新型コロナウイルスの悪影響は一過性のもので、通年ベースでは取り返せるという見立てだ。

『会社四季報』(2020年2集春号)は3月16日(月)発売。書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

ほかに新型コロナウイルス以外にも、2019年度(2019年4月~2020年3月)は、米中貿易摩擦や消費増税、台風禍と悪材料が重なった。このうち消費増税による駆け込み消費の反動減は徐々に平常化していくだろう。米中貿易摩擦については停戦状態となっている。天候については予測がつかないものの、平常化するだけでプラス材料となる。あとは新型コロナウイルス禍の早期終息を願うばかりだ。

さて『会社四季報』では、毎号テーマを変えて、特集やランキングを企画している。今号の特集のテーマの1つは、「1人当たり売上総利益」だ(売上総利益=人件費などを除く前の利益)。近年は人手不足や働き方改革などへ対応するため、工場において省人化を進めたり、バックオフィス業務でAIを導入したりするなど、各企業は業務効率化の取り組みを積極的に進めている。その結果、1人当たり売上総利益を増やすことができれば、そこから給与を差し引いたとしても、多額の営業利益を残すことができる。ちなみに、業種別平均で見た1人当たり売上総利益のトップは、不動産の4074万円だった。

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