ローンを組む人が見落とす家計の「バランス」 家計のバランスシートで丸裸になる家計状況

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さらに5年が経過して、バランスシートは次のようになったとします。土地建物の資産価値は100万円ほど減り、乗用車の資産価値も50万円に。しかし順調に貯蓄をして現金預金と株式が増え、資産は全体で3300万円になりました。

自動車ローンと奨学金の返済が終わり、住宅ローンの返済も残すところ2000万円。純資産は1300万円です。住宅購入直後の純資産500万円から800万円のプラスとなりました。このように、家計のバランスシートを書くことで、ある時点の資産状況がひと目でわかるようになります。

家計の健全性は「純資産」で判断する

資産の総額が多くても、負債が多ければ純資産は小さくなります。住宅ローンの繰り上げ返済などを利用して負債を減らしていけば、そのぶん純資産は増えていきます。

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不動産を購入して「総資産1億円」などと聞くことがありますが、総資産がいくら多くても、負債の割合が多ければ、健全な資産管理ができているとは言えません。家計の健全性を見るには、総資産ではなく純資産を見極めることが大切なのです。

ファイナンシャルプランナーに家計について相談すると、大抵ライフプランニング(人生設計)をすることになります。ライフプランニングでは、ある時点における資産全体と負債全体の把握がとても大事になります。

家計のバランスシートを作成してみて、純資産がマイナスになっていたり、純資産が継続的に減っていたりするような場合には、お金の使い方を見直す必要があるといえます。

西村 隆男 横浜国立大学名誉教授、経済学博士

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にしむら たかお / Takao Nishimura

財団法人消費者教育支援センター主任研究員、横浜国立大学助教授、アイオワ州立大学客員研究員などを経て、2000年より横浜国立大学教育人間科学部教授、東京学芸大学連合大学院博士課程教授(兼務)。2017年定年退官、現在は横浜国立大学名誉教授。専門は金融教育、パーソナルファイナンス、消費者教育。消費者教育推進会議会長、日本消費者教育学会会長などを歴任。現在、文科省消費者教育推進委員会委員長、金融経済教育推進会議委員、金融広報中央委員会委員などを務める。著書に『社会人なら知っておきたい金融リテラシー』、『子どもとマスターする46のお金の知識』、『子どものおこづかい練習帳』などがある。

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