新幹線の札幌延伸で「長万部」起死回生できるか 開業11年後、「便利な田舎」の将来に不透明感

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「人口は5000人少しだが特急が止まる。いわば便利な田舎です。ニセコや洞爺湖、登別温泉、札幌、函館には勝てないけれど、縄文時代から北方・南方の交易地。イベントにも人が集まりやすい。新幹線開業で人の流れが変わる。つまり、地域の血流が変わるんです」と、加藤課長は見通す。

黒松内駅の時刻表=2019年5月(筆者撮影)

ただ、公共交通網の先行きは不透明だ。長万部―黒松内間は、函館本線で乗車2駅、約20分ながら、列車は長万部行きが1日5本、黒松内方面行きが4本にすぎない。

かつて2往復していた路線バスは、2019年12月から1往復・日曜祝日運休になり、廃止も視野に入っているとされる。

また、長万部―豊浦間は室蘭本線で結ばれているものの、行き来に利用できる普通列車は長万部行きが1日5本、室蘭・苫小牧方面行きが4本にとどまり、路線バスは走っていない。

11年後の地域の足はどうなる?

全国の整備新幹線地域でも、函館本線沿線は津軽半島北部と並び、地域の社会的、経済的環境が厳しい。しかも、北海道新幹線の延伸時、函館本線は並行在来線としてJR北海道から経営分離される。11年後、地域と住民の足はどうなるのか。

長万部から20kmほどの距離にある黒松内駅=2019年10月(筆者撮影)

北海道新幹線のルート公表から今年は22年目、ちょうど待ち時間の3分の2がすぎたことになる。まだ先の道のりが長いこの段階に、「はしっこ同盟」が動き出した意義とインパクトは大きい。

大半のまちが具体的なアクションを起こせない時期の、しかもコンパクトながら、地域そのもののつくり変えを視野に入れた活動だからだ。これから札幌延伸まで、3町は人口や産業に必ずしも恵まれない地域を、どう深く広く変えていくのだろうか。

櫛引 素夫 青森大学教授、地域ジャーナリスト、専門地域調査士

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くしびき もとお / Motoo Kushibiki

1962年青森市生まれ。東奥日報記者を経て2013年より現職。東北大学大学院理学研究科、弘前大学大学院地域社会研究科修了。整備新幹線をテーマに研究活動を行う。

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