新幹線の札幌延伸で「長万部」起死回生できるか 開業11年後、「便利な田舎」の将来に不透明感

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調印後、活動は職員相互の行き来と交流会からスタートし、2019年6~7月に開かれた「いちご豚肉まつり」(豊浦町)、「おしゃまんべ毛がにまつり」、「黒松内ビーフ天国」には、それぞれ「はしっこ同盟」としてブースを出店した。3町合同の「ふるさと納税」返礼品も開発した。各町とも広報誌に「はしっこ同盟」の情報コーナーを設け、住民団体同士の交流と親睦も進んでいるという。

来場者でにぎわう「豊浦町いちご豚肉まつり」=2019年6月(写真:長万部町役場)

「旅行者には行政区域は関係ない」「移住も3町のどこかに移り住んでもらえれば。圏域として人が増えればいい」「移住までは無理でも『経済的に住んでもらう』形もある」「力を合わせて地元にお金が落ちる仕組みをつくりたい」――。示唆に富んだ言葉が、加藤課長や岸上課長からこぼれ出る。

新幹線の建設・開業地域では、圏域のハブに徹して大きな成果を挙げた道南・木古内町のような地域もある(2017年2月7日記事「『道の駅』来場55万人!新幹線で変わる木古内」参照)。一方で、市町村の境や心の垣根を越えられず、恩恵を取り逃がしているとみられる地域も目につく。

さまざまな事例を教訓に、長万部町は近隣2町と新たな地域づくりへ踏み出した。「同盟」関連の予算は補助金に頼らず、3町それぞれが自前でまかなう。もともと、「平成の大合併」の際には長万部町と黒松内町の合併構想があり、合併協議会の設立にまで至った。結局、この構想は実現しなかったが、心理的な距離は近い。現在は、同盟が1つの自治体のように機能するイメージ、あるいは広域連合に近い姿がベースにあるという。

将来への危機感が原動力

「はしっこ同盟」の最も大きな原動力は、地域の将来への危機感だ。3町の面積は合計約890平方キロメートルと東京23区の1.4倍に達する。しかし、人口は減り続けている。

長万部駅の時刻表。特急の表示がわかりやすい=2019年5月(筆者撮影)

長万部町の人口は、ピークの1964(昭和40)年には1万5349人を数えたが、2019年1月現在、5493人まで減少した。同じく黒松内町の人口は2837人、豊浦町は3919人で、3町合わせても1万2000人強にすぎない。高校も3町の中では長万部町にしか残っていない。

一方で、長万部には地の利がある。特急なら函館へ1時間半弱、札幌まで2時間10分台で行き来できる。車なら函館まで1時間40分、札幌まで2時間40分ほど、北海道の人々はそれほど苦にしない時間距離だ。

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