「iDeCo」をほったらかす人は老後に後悔する まずは自分の会社の仕組みを必ず聞くべきだ
マッチング拠出の後追いで導入が始まった、「iDeCo併用」という仕組みもあります。こちらは会社のDCとiDeCoを同時に2つ持てる、という画期的な制度案です(マッチング拠出と異なり、それぞれ月2万円まで、iDeCoに個人の掛け金を拠出できます)。
画期的なのは、確定拠出年金のポータビリティー、つまり「持ち運び」の際の制度改正です。
確定拠出年金はDCであろうがiDeCoであろうが、あくまでも個人口座であるということから、転職しても「持ち運び」が可能です。例えば個人型に加入していた人が、企業型を導入している会社に転職すると個人型の資金を企業型に「移換」し、さらに企業型のある会社を辞めて企業型のない会社に勤めると、また個人型として継続し、資金を「移換」できます。
DCからiDeCoへと形態は変わりますが、掛け金の拠出期間は加入期間として認められ、受取時の退職所得控除を計算する際は勤続年数とみなされて有利に働きます。
ただし、移換の際にはすべての運用商品を売却しなければなりません。転職により長期運用が中断されることになるのです。自己都合の転職だけでなく、会社都合も同様です。会社都合の退職が発生するときは、たいてい景気が悪いときなので、株価低迷などで損失を被ることもありえます。
転職する会社員にとって、移換時の全資産売却は確定拠出年金制度における最大の弱点といえますが、「iDeCo併用」が認められると、iDeCo口座については転職しても資産の売却が不要でそのまま継続となるのです。そのため、DC口座は転職時の全資産売却を見越しリスクを抑えた運用、iDeCo口座では積極運用などの使い分けもできるようになります。
労使の合意がなくてもiDeCo加入が可能に
iDeCo加入者がDCのある会社に転職した際、「運用指図者」としてiDeCoの資産を保有し続ける(加入者として新たな拠出はできない)ことは認められています。しかしiDeCo併用が認められるようになると、iDeCoに掛け金を拠出し続けることができるので、長期運用をより実現しやすくなります。
しかしiDeCo併用を認めている会社は全体の1割程度ともいわれており、普及には大きなハードルがあります。企業が拠出する掛け金を月5万5000円から3万5000円に減額し、差額の2万円をiDeCoに振り分けるという規約変更をしなければならないからです(確定給付年金などほかの企業年金がある場合は、2万7500円の掛け金上限を1万5500円に引き下げ、iDeCo枠は1万2000円となります)。
役職などによってはDC掛け金が上限いっぱいの5万5000円という人もいます。もしiDeCo併用を認めようとすれば、この人の掛け金を3万5000円に引き下げなければなりません。当然ながら2万円の減額に対し代替措置を講じなければなりません。給与に上乗せすれば課税されますし、掛け金を止めれば不満になりますから、労使合意をとるのは困難でしょう。
それが今回の制度改正案では、「会社の規約変更は不要で個々人がiDeCo併用を選べるようになる」としています。まさに画期的です。さらにマッチング拠出が導入されている会社の人もiDeCo併用が選べるようになるようですから、会社掛け金が少ない場合、iDeCoをチョイスして有利な資産形成枠を確保することもできます。
最近では、DCに比べてiDeCoのほうが、商品ラインナップが優れていると評価されることも多くなりました。iDeCoは2017年以降、新規参入の金融機関も増え、情報開示が進んだおかげで競争が働き、手数料含め加入者にとってはよりよい環境が整い始めたからです。
いずれにしても、選択肢が増えたところで、「もらったお金」のありがたみも感じられない人にとっては、結局どんな制度も宝の持ち腐れです。まずは会社にDCがある場合は、会社の制度や自分のDC口座の状況を確認してください。そして、来るべきiDeCo併用時代に備え、自分の資産形成プランを立て直しされることをおすすめします。
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