もちろん政府は、武漢封鎖の時点から緊急の感染防止態勢をとった。ただ、世界各国同様の「中国本土からの渡航禁止」という厳しい措置ではなく、武漢を含む湖北省からの渡航禁止などの緩い対応をとったことが、「結果的に水際作戦の失敗」(自民幹部)につながったとの批判を生んだ。
加えて、ウイルス感染の可能性が指摘された大型観光クルーズ船「ダイアモンド・プリンセス」号を2月3日に横浜港に寄港させた際、約3700人の乗客・乗員を船内隔離したことで、逆に大規模な集団感染を誘発した。国際社会で「やってはいけないことの見本」(アメリカ有力メディア)などの批判にもさらされた。
しかも、武漢封鎖前の1月中旬に都内の屋形船で集団感染が起こっていたことも判明し、野党側は「政府の対応は情報収集不足で後手に回った」(立憲民主党幹部)と攻撃してきた。
政府の不手際で内閣支持率は低下
政府の対応が遅れたのは「アベノミクスを支えるインバウンド(外国人観光客誘致)への悪影響や、4月上旬に予定される習近平・中国国家主席の国賓としての訪日への支障を懸念したため」(自民幹部)とされるが、その後の国内感染の急拡大が国民の不安増幅にもつながった。
これまでは大地震などによる大災害発生時に、「政府の迅速な対応をアピールすることで、政権浮揚につなげるケースが多かった」(自民長老)ことは事実だ。しかし、今回は後手に回った対応や、国民への情報公開の不足や遅れなどが「政権不信につながった」(同)とみられている。多くの世論調査でも「政府の対応は不適切」との声が多く、内閣支持率の低下要因となった。
そうした中、内閣府が2月17日に発表した2019年10~12月期のGDP速報値は年率換算で6.3%減と、5四半期ぶりのマイナスとなった。減少幅は事前の予想を大きく超え、2019年10月の消費増税の影響も際立たせた。5月中旬に発表予定の2020年1~3月期のGDP速報値も、「コロナ感染拡大による国内消費の落ち込みで、さらなる悪化が確実」(エコノミスト)とされる。
その場合、国際的には「日本はリセッション(景気後退)入り」とされ、その後の政権運営への打撃となるのも避けられない。
これら政府の新型肺炎対応のまずさに焦り、いら立った安倍首相が全国での臨時休校という前代未聞の対応に踏み切ることで、「指導力アピールによる支持率回復を狙った」(閣僚経験者)との見方が広がったのも当然だ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら