かんぽ生命、新社長が危機感を示した深刻事情 不適正募集の発覚前から続く契約数の減少
契約が成立した時点での「確定値」で管理すればよさそうなものだが、そうすると集計に最長で半年かかり、年度目標の達成に役立たない。そこで準確定値での管理を試験的に導入した。2015年4月のことだ。
もっとも、準確定値の運用は試行であり、実際の管理は速報値で行われた。2016年度も同様だ。ところが「『準確定値では現場の士気が上がらない』と複数の幹部が猛反発し、2017年度に営業管理が速報値1本に戻った。準確定値の試験導入で被保険者が同意しない契約は激減したのに、再び大量に出てくるようになった」(ある郵便局員)という。
営業実績の管理のあり方について千田社長に聞くと、「速報値ばかり追いかけたのが大きな問題の1つ」と述べた。広報部によると、「募集品質向上に向けた総合対策」の一環として、「2019年4月から、契約者からの申し込みに加え、被保険者の同意・面接が終了した時点を『実績計上』としている」という。
だが、それが定着する間もなく2019年の6月に不適正募集の問題が発覚。夏以降はかんぽの営業を自粛している。問題収束後、営業を本格再開したとき、2019年4月に導入した新しい実績計上の管理をどこまで徹底できるかが重要になる。
「残された時間はそんなに長くない」
「信頼回復こそが大事だ」。2020年1月に就任したばかりの日本郵政の増田寛也社長、日本郵便の衣川和秀社長、かんぽ生命の千田社長の3人は口をそろえる。中でもかんぽにとって、信頼回復は最重要課題といえる。
それは、今回の不適正募集発覚の前から契約者減少に歯止めがかからないという構造的な問題を抱えているからだ。損益計算書上、解約が新規を上回れば責任準備金の取り崩しで利益が出る。ここだけを見ていると構造的問題はわからない。
キャッシュフロー計算書がそれを端的に表している。本業が稼ぐ現金を示す営業CFは毎期2兆円のマイナスだが、これは新規の契約よりも解約が多いためだ。それを毎期、同額程度の国債売却で埋め合わせてきた。
国債残高は2019年3月末で58兆円。「現状がずっと続くとなると、リスクが高くなるのは事実。残された時間はそんなに長くはない。将来ビジョンを含めて今、しっかり考えていかないといけない」(千田社長)と認める。
かんぽは信頼を回復し、契約数減少に歯止めをかけられるのか。千田社長は出直しのスタートラインにもまだ立てていない。
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