優秀な人の「あえて答えを言わない」超会話術 指示待ち部下は上司が作っているという事実

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そしてもう1つ、忘れてはいけないのは「間違いを否定しない」というルール。人を育てる人は、これを自分の中で徹底してください。これは部下だけでなく、実は子育ても同じです。

先ほどの例でも、「明るい青」という答えを導きたいのに、相手からは「紺」という答えが返ってきました。このように、明らかに間違ったことを言われたとき、わたしたちはつい相手の意見を正したくなります。実はここにも「自己重要感」が隠れています。違う意見を主張されると、私たちは「自分の自己重要感が損なわれた」と感じてしまうからです。

ここで自分の「自己重要感」を脇に置き、相手の「自己重要感」を優先することができるかどうか。相手が検討違いの答えを言っても否定せず、気づくまで質問を続けるという「神対応」ができれば、人は「あなたのもとで働きたい」「あなたのために働きたい」と思ってくれるようになります。

行動を継続させる「自己重要感」の高め方

人が「動く」要因はというのは、実は2つしかありません。

・「快を得る」(ために動く)
・「痛みを避ける」(ために動く)

「快を得る」ためのパワーを元にした行動は「継続性」に優れ、「痛みを避ける」ためのパワーを元にすれば、瞬間的な行動を導くことができます。優秀なリーダーは、この2つをうまく使い分けています。「自己重要感」という感情は、人間にとって「快」の感情です。そのため部下に恵まれている人ほど、相手の「自己重要感」を満たす会話をしているものです。

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これは私も日々感じていることです。作家に締め切りはつきもの。ただ、毎回「◯日過ぎたら、原稿落ちます!」という「痛い脅し文句」で対応されたら、疲れ切ってしまいます。これでは、「いい原稿を書こう」というモチベーションも下がります。

同じ締め切りの話でも「何日までならできそうですか?」とまずは聞いてもらえたほうがうれしい(笑)。そのうえで「来月号に載せるとしたら、何日までにもらえますか?」などと聞いてもらえれば、「それなら月末までに」と、「ちょっと頑張ってでも仕上げよう」というモチベーションも湧いてきます。自分の意見が尊重されている、自分は大切にされていると感じることができれば、やる気も出てくるものです。

周りの人が思ったとおりに動いてくれないのは、あなたの対応のせいかもしれません。指示を出したり、アドバイスするのではなく、相手に気づかせ、相手を否定しない「神対応」ができれば、周りはどんどん成長し、あなたの仕事もずっと楽になるはずです。少しでも気になった人はぜひ今日から実践してみてください。

星 渉 著作家、経営コンサルタント

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ほし わたる / Wataru Hoshi

著書累計7冊45万部。株式会社Rising Star代表取締役。1983年仙台市生まれ。大手企業で働いていたが、東日本大震災に岩手県で被災。生死を問われる経験を経て「もう自分の人生の時間はすべて好きなことに費やす」と決め、2011年に独立起業し、心理療法やNLP、認知心理学、脳科学を学び始める。それが原点となり、個人の起業家を対象に「心を科学的に鍛える」を中心に置いた独自のビジネス手法を構築。『神メンタル』『神トーーク』(ともにKADOKAWA)は25万部突破のベストセラーに。

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