2月6日から(日本の内閣に相当する)国務院は、秩序ある生産の正常化を進めることを強調しはじめた。(武漢のある)湖北省以外の感染者数が徐々に減少するにつれて、各地の地方政府も凍結政策を調整しはじめ、工場の歯車が少しずつ回り出した。
ホンハイは元々、中国大陸のすべての工場で2月10日に操業再開することを計画していた。だが、2月9日の夜になっても、ほとんどの従業員は操業再開の明確な通知を受け取っていなかった。
深圳市疾病予防管理センターは2月6日にホンハイを視察し、「今のところ大規模な操業開始の条件を備えていない」との結論を出した。原因は、同社の従業員宿舎のほとんどが8人部屋で風通しが悪いことと、食堂の食事環境が密集していることだ。同センターはホンハイに「秩序ある操業開始」を求めた。
2月15日、同社の深圳工場は地方から来た湖北省戸籍以外の従業員に対して、職場への復帰をようやく通知し、2月19日までに工場に戻るよう要求した。
鄭州工場は2月17日に省内での従業員募集を始めたが、翌日には鄭州出身者以外のすべての従業員募集と職場復帰を休止した。原因は、隔離用の宿舎の不足だ。
深圳に戻っても14日間の隔離が必須
姚は、通知を受け取った3日後に湖南省株洲の実家から深圳に戻り、ホンハイの「楽富勤」宿舎で14日間の隔離生活を始めた。改造後の宿舎は1人1部屋で、会社が寝具を提供し、食事は3食ともドアまで持ってきてくれる。
「食事はまあまあよい。牛乳とリンゴがついている」。姚は、同社の職場復帰に向けたサービスにとても満足している。
彼と同じ宿舎には、他にも1320人の男性従業員が隔離されており、深圳工場エリアには多くの同じような隔離用宿舎がある。
ホンハイの操業再開は例年よりも遅くなることを避けられない。2月6日、同社の衛生担当責任者は、深圳市疾病予防管理センターの監督検査グループに対して次のようなデータを報告した。
「2月10日に5.7万人が深圳工場に到着する。(深圳に)とどまっていた2万人の従業員を合わせると、約7.7万人になる。この数字を基に計算すると、従業員の復帰率は約43%だ」
ホンハイの操業再開の旅は、さまざまな鏡面を持つプリズムのようだ。1つひとつの鏡面には、中国が「世界の工場」として、感染が拡大するなか再び立ち上がろうとする切迫感や努力、慎重さややるせなさが映し出されている。
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