日本初!「アーティストホテル」の作り方 歌舞伎町の"とがった"ホテルは業界の常識を変えるか

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客室タイプが多くなればなるほど、開発コストはかさむ。それでも同ホテルは「周辺のビジネスホテルとほぼ同等の坪単価」(寳田氏)で建設できたという。

その背景には、オーナーと設計者との信頼関係がある。同ホテルの実質的なオーナーは、カタログ通販大手ベルーナの創業者、安野清氏。安野氏はホテルの開発に際して、寳田氏に全権をゆだねた。通常、ホテルでは複数の施工会社が関与し、資材の調達も分散することが多い。しかし、同ホテルでは寳田氏が設計だけでなく、施工もコントロールすることで、結果的にコストダウンにつながった。

外国人客が半分、スーツ姿も

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オモテの客室は新宿のONを表現

開業して約3カ月、宿泊客の国内外比率は約半々。当初の目論み通り、アジアからの観光客が多い。国内からの宿泊客は30~40代が多く、平日はスーツ姿も目立つという。

客室稼働は周辺ホテルと比べてやや静かなスタートだが、今後は旅行会社経由の販売も増やす方針。1階のカフェで音楽のライブを開催するなど、「ファン・トゥ・ステイ(泊まる楽しさ)をもっと表現したい」(安野総支配人)という。

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ウラの客室は新宿のOFFを表している

歌舞伎町という場所、参加したアーティストの熱意、そしてオーナーと設計者の信頼関係。これらがすべてそろって、これまでにないホテルが完成した。

「日本のホテルは合理的で清潔だが、面白みがない。それを変えたかった」(笈川氏)。このホテルが軌道に乗れば、日本のホテルはもっと面白くなるかもしれない。

(撮影:今井康一)

「週刊東洋経済」2014年3月22日号(3月17日発売)では「ビジネスマンのための最強のホテル」と題した特集を掲載しています。

並木 厚憲 東洋経済 記者

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なみき あつのり / Atsunori Namiki

これまでに小売り・サービス、自動車、銀行などの業界を担当。テーマとして地方問題やインフラ老朽化問題に関心がある。『週刊東洋経済』編集部を経て、2016年10月よりニュース編集部編集長。

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