ただ、筆者は、企業利益そして手元キャッシュフローの減少をうけて、多くの企業が設備投資に慎重姿勢を強めたことが、設備投資の落ち込みをもたらした可能性が大きいと考えている。そもそも、日本の大企業の利益は2018年央をピークに減少に転じていた。これが、1年以上にわたり続く中で、企業経営者の先行き不信感が強まり、そして企業の設備投資意欲が冷え込んだとみている。
日本経済はすでに減速でなく景気後退に陥っている
これを景気循環論に当てはめると、日本経済は2018年秋口がピークとなり、それ以降は世界経済の減速をうけて下向きに転じた。そして、景気一致指数(CI)は2018年10月(103.9)となり、その後1年以上低下が続いているが、これを踏まえれば、日本経済は減速ではなく、2018年後半から緩やかな景気後退が始まっていたと見なされる。
今回発表された2019年10~12月GDPの大幅な落ち込み、そして2020年1~3月もマイナス成長となるリスクが高まり、景気後退入りとの見方が増えている。ただ、先述したとおり、日本経済は2018年10~12月から既に景気後退局面に入っていたと考えられる。なお、筆者は、2019年10月の消費増税が決まりこれに伴う経済の落ち込みを予見していたため、日本経済は既に景気後退局面に入っていると2019年半ばの時点で景気判断を変えていた。
なぜ、2018年後半から日本経済は景気のピークをつけて景気後退局面に入ったのか。一つは、2018年央から世界の製造業の景気循環が下向きに転じ、輸出や製造業の生産が低調になったことがある。ただ、外部環境の悪化によって必ず景気後退になるわけではない。例えば、2019年のアメリカ経済はほぼ2%の安定成長が続いていた。
そう考えると、日本経済が2018年から景気後退に陥っていたとすれば、これは国内の総需要安定化政策が景気縮小的に作用していたとみるのが妥当だろう。つまり、日本の金融政策、財政が経済成長を抑制する方向に作用していた、ということである。
2018年を振り返れば、日本銀行は、夏場に誘導目標である10年長期金利の変動幅を拡大させる「微調整」を行った。これは10年金利の変動を容認する対応で、金融引き締めではないと説明されたが、日銀が(事務方主導と思われるが)将来の引き締めに転じる準備を始めていたのが実情だろう。
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