「児童虐待防止政策」には致命的な問題がある 虐待死を防げない根本的な理由は何なのか

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凄惨な虐待死事例が起こるとどのように政策が動くのでしょうか。2019年1月に千葉県野田市で当時小学4年生の栗原心愛さんが虐待死した事件発生後、政府の指示を受け厚生労働省は1日で対策を策定しました 。しかし、短期間で作成するということは、法務省、警察庁、財務省、総務省などと調整をしていない、つまり厚労省単独でできるレベルの対応策なのです。

よって、子どもの緊急安全確認など、政策効果がほぼない対応をするしかなくなり、そもそも大量の業務を抱えている現場の職員がその安全点検に時間を割かれ、よりよいケアができなくなるという矛盾を抱えることになります。

さらに財務省や総務省が入っていないために、その安全点検を行うため実質労働時間が伸びても残業時間や残業手当などは現場の地方自治体任せです。予算をつけないということは、竹やりで戦地に赴くようなものです。

心愛さんの事件から1年経ちますが、厚労省、文科省のみの評価がされているものであり、一向に進みません。このように厚労省のみできるような対策を、「小手先の改革」といい、大きな事件が起こるごとに小手先の改革しかできないので、抜本的な問題解決ができないのです。

子どもの保護や措置、再統合は裁判所の責任で

虐待死の多くは児童相談所の児童虐待ソーシャルワークに不備があったことは否定しません。しかしそのソーシャルワークは、司法が関わらないという不備のために歪んだ発達(親との関係性構築を優先して子どもを救えなかったなど)をしているのです。

海外との比較でわが国の児童虐待ソーシャルワークで欠如しているのは子どもの視点ですが、その根本理由として、司法が関与しないためにソーシャルワークを混乱させ現場に責任を負わせ失敗しているという、海外の痛烈な意見をぜひ司法関係者は理解してほしいです。

司法、つまり裁判所が、子どもの分離について責任を負って判断する。それだけではなく他国では当たり前である、裁判所が親に改善プログラムの受講命令を出す。親は改善したエビデンスを出さず2年以上措置されたら裁判所が親権を剥奪する。それがどれだけ子どもの権利を保障し、また現場従事者がより適切に仕事をできるということになるか――。

国は児童福祉司を2022年度までに5260人に増やすという「児童虐待防止対策体制総合強化プラン」を立てていますが、司法介入については言及がありませんでした。

児童福祉司の増員は必要不可欠です。海外と比較すると、日本は1万6000~2万人程度児童福祉司がいてもおかしくありません(2019年4月1日現在は3817人)。

しかしどれほど児童福祉司が増えても、司法介入がない制度は確実に失敗します。児童福祉司を2万人にするより家裁調査官の数を4倍にして司法にコミットさせたほうが望ましいと思います。結論として、児童虐待防止政策を福祉だけで司法が介入しない制度はマクロ政策としてありえないのです。

和田 一郎 獨協大学国際教養学部教授

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わだ いちろう / Ichiro Wada

筑波大学大学院人間総合科学研究科(社会精神保健学)修了。博士(ヒューマン・ケア科学)。専門はデータサイエンス。社会福祉士、精神保健福祉士。人口減少社会における公共サービスの在り方、行政DXの活用や震災・疫病などの危機時における子ども等の弱者の支援におけるデータサイエンスの活用 などを研究している。

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