ジョブズが愛した「黒セーター」に隠された秘密 「イッセイミヤケ」が生んだ唯一無二の世界

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流行に左右されない機能性と美しさを追求した「日本ファッション業界の寵児」三宅一生。なぜイッセイは本質を追求するデザインにこだわったのか? (写真:ロイター/アフロ)
ファッションがデザインの一分野だとまだ認められていなかった頃に、「日本ファッション業界の寵児」として注目を集めた三宅一生。流行に左右されない機能性と美しさを追求したデザインは、かつてスティーブ・ジョブズも愛用していました。
なぜイッセイは装飾をそぎ落とした本質を追求するデザインにこだわったのか? 『「イノベーター」で読むアパレル全史』よりその秘密をご紹介します。

理系の言葉が似つかわしい、独自の衣服デザイン

フランスからは芸術文化勲章最高位コマンドール受章(1991年)、レジオン・ドヌール勲章最高位コマンドール受章(2016年)、イギリスからはロイヤル・カレッジ・オブ・アート名誉博士号授与(1993年)、そして日本では文化勲章(2010年)をはじめ、名だたる勲章や賞を授与されている三宅一生(以下「イッセイ」)。ファッション界の巨匠ではあるが、テクノロジー、研究開発、制作プロセス、実験など、むしろ理系の言葉が似つかわしい独自の衣服デザインによって世界に知られている。

イッセイは、多摩美術大学在学中から「装苑賞」を1961年、1962年と2年連続で受賞するなど頭角を現す。第1回コレクションから従来の服作りの手法を度外視した作品で注目を集め、日本ファッション界の寵児となった。しかし、ファッションをデザイン分野として認めない当時の日本の状況にいら立ち、パリ、ニューヨークへ向かい、修業と経験を積んだ。

日本に帰国した1970年に「三宅デザイン事務所」を設立、1973年にはパリコレクションに初参加する。「1枚の布(a piece of cloth)」で身体を包むことで、東洋/西洋の枠を超越した衣服の本質と機能を問う「世界服」を創造した。身体と布をコラボレーションさせるスタイルをはじめ、新しい技術を駆使した服でつねに話題を振りまいてきた。

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