アップル「売上高未達」に見る中国の立ち位置 コロナウイルスの影響は思った以上に甚大だ

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縮小

2つ目の理由は消費の縮小だ。中国は国単位で見れば、アメリカに次ぐ第2位のアップル製品・サービス消費国だ。

その中国で、北京を除く直営店が今もなお閉鎖されており、通信キャリアやそのほかの販売店の閉鎖も続いている。中国で売り上げが最も盛り上がる春節の時期に、小売店を介した売り上げがまったく立たなかったとみてよいだろう。2020年第1四半期の中華圏の売上高は135億7800万ドル。単純に計算しても、1週間あたり10億ドル以上の売上高があり、休業が続けばその規模で売上高を毀損していくことを意味する。

2019年中も中国市場は大きな減速を強いられてきたが、2019年10〜12月期は前年同期を上回り、需要の回復への期待が見られた。しかし再び大きな減速に落ち込むことになる。

このように、製造、消費の両面で、アップルにとって中国は重要な地域であることがわかる。そこを震源とする新型コロナウイルスの影響は、アップル自身も織り込んでいたとはいえ、収束に引き続き時間がかかるとの見方に修正されたことを物語る。

3月の新製品への影響は?

アップルは例年、iPhoneとApple Watchは9月に刷新するが、それ以外の製品、iPadやMacBookシリーズなどについても最新版を投入して需要を喚起してきた。そのタイミングは3月、6月の世界開発者会議やその前後、9月のiPhone発表と同時、そして10月末のホリデーシーズン前の4回だ。直近で製品が発表されそうなのが来月、3月だ。

2020年の3月は、アメリカの価格で400ドル、日本で45000円程度になるとみられる廉価版の iPhone(iPhone SEの後継モデル、あるいはiPhone 9とも)の投入が期待されていた。しかし今回の新型コロナウイルスの影響で、iPhoneが製造できるのか、イベントが開催されるのかが不透明だ。

少なくとも、グローバルのプレスを集めたイベントは、開催できる状況にないのではないか、と考える。毎回のイベントで、市場規模を反映して、アメリカに次いで多くのプレスが招待される国が中国だ。しかしアメリカは2月1日から、過去2週間以内に中国に滞在したことがある外国人の入国を拒否する措置を取っており、すなわち中国本土から訪れるプレスはアメリカに入ることすらできない。通常のスタイルのプレスイベントは成立しない、ということだ。

中国プレス抜きでイベントを行うこともできるかもしれないが、そもそも今この段階で世界中の人をアメリカに渡航させるイベント開催は、いくら自社施設であっても難しいだろう。アップルは今回の利益警告でも「関係者の健康第一」としており、イベント開催はこれに反するからだ。

ただしアップルには注目度の高い自社ウェブサイトでオンラインストアも兼ねるApple.comがある。昨年ノイズキャンセリング機能を搭載したAirPods Proを、イベントではなくウェブサイト上で発表したが、品薄解消のメドが立たないほどの大ヒットとなっている。

リリースの方法が問題にならないのであれば、あとは作れるかどうかだ。アップルが今回の利益警告のマイナス要因に、3月の早い段階にリリースする廉価版iPhoneの初速の売上高を織り込んでおり、これが遅れることが確定的となったため、利益警告が出された、と考えることもできる。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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