貴族のような生活なのに幸せでない現代人の闇 「前のめりな生き方は他者に利用される」

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私は、「立ち止まることができる力こそ教養である」と考えます。前のめりに突き進むのではなく、周囲の人たちが、社会が前のめりになって1つの方向に突き進んでいる時、「ちょっと待てよ」とか「あれ? おかしいぞ」と立ち止まることができるか?

このようなことも、「前のめり」になっているとよくわからないと思います。テレビ番組などで有名な評論家が、「これからは自己責任の時代であり、努力しない人は社会から落ちこぼれても仕方がない」などと解説していると、なるほど社会の流れに振り落とされないようにとがむしゃらに頑張ってしまう。

少し不真面目に、斜に構えてものを見る

しかし、世の中で言われていることが本当に正しいかどうかはわかりません。むしろいろんな思惑の中で、ある一部の人間たちにとって都合のいい論理が先行していることも多いのです。

『メンタルの強化書』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

言葉は悪いのですが、少し不真面目に、斜に構えてものを見るくらいでちょうどよいかもしれません。ただし、本当に斜に構えてしまうと、斜めから物事を見続けているうちに、見方が歪んでしまうということもあるでしょう。

そこで「人よりも半歩遅れて進む」という考え方をお勧めします。詳しくは拙著『メンタルの強化書』に書きましたが、世の中の流れと一緒になって、前のめりに進むのではなく、あえて「半歩遅れて」物事を見るのです。

少し引いて物事を見ることができますから、全体像がよりはっきりとわかります。そうやって少し時間を稼いで判断する。テンポの速い時代はそれくらいがちょうどいいのです。「前のめり」でがむしゃらに頑張っても、気がつくと誰かの思惑に都合よく踊らされている可能性もあります。そして知らずのうちに心身ともに疲弊してしまうのです。

佐藤 優 作家・元外務省主任分析官

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さとう まさる / Masaru Sato

1960年、東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了。

2005年に発表した『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。2006年に『自壊する帝国』(新潮社)で第5回新潮ドキュメント賞、第38回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『読書の技法』(東洋経済新報社)、『獄中記』(岩波現代文庫)、『人に強くなる極意』(青春新書インテリジェンス)、『いま生きる「資本論」』(新潮社)、『宗教改革の物語』(角川書店)など多数の著書がある。

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