「鉄道廃線跡本」の編集者が語る大ヒットの秘訣 自分の「好き」が大切、発売前から注文殺到

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――鉄道ファンの動向は変わりましたか。

最近の鉄道ファンの傾向は、目の前に走っている車両をただ撮影するとか、全線乗りつぶすとか、それぞれ1つのことだけで完結してしまっているようだ。車両に興味のある人も、新型車両を追っかけて写真を撮ってくるだけで、そこから発展することがない。専門特化しているといえばそうなのだが。

まして、自分の目的だけに目が行って、問題を起こしたりするのは嘆かわしい。かつての鉄道ファンは、好きな車両の姿を残したいから写真も撮るし、時刻表や鉄道史も研究する、橋梁やトンネルなどの構造物に興味を持つ、切符を収集する、といった具合に、多ジャンルに興味を持った。複合的に捉えていると、それが有機的に結びついて、いろいろなことがわかってくる。そういうところに、楽しみを見いだしていた。

歴史に関心を持つ人が少なくなっている。ローカル線で蒸気機関車や旧い車両を走らせているところがあるが、それを楽しむ年齢層は高い。鉄道の発達の歴史は、常に技術革新と共にある。また、鉄道の利用の仕方は、社会や経済を反映させている。それを紐解いていく、研究のおもしろさを求めないのは残念だ。

さらに、調べるにしても文献に当たらない。何でもネットで調べられると思っている人が多いが、ネットで得られる情報は、ほとんどがどこかからの孫引きか、主観だ。それを引き写してくる間に間違いが起こり、ある人の感想が真理のようになる。さらにそれを調べもせずにまた引き写すことで、やがて間違ったことが正当化されて定説のようになってしまう。本に印刷されたものでも間違いはあるが、インターネットの比ではないことを、強く意識しなければならない。

今後はどんなブームが来る?

――今後、廃線跡に続くような鉄道趣味のブームのようなものはあるでしょうか。

島根県の江津(ごうつ)と広島県の三次(みよし)を結んでいた三江(さんこう)線が2018年に廃止される前に乗りに行ったとき、中年女性3人と同じボックスに座った。彼女たちは、沿線に住んでいるが普段は自家用車ばかりを利用するので、三江線に乗ったのは初めてだという。地元を走っていた鉄道だが、もうなくなってしまうというので乗ってみようと思い立って来たという。車両を見渡してみても、そのような人がほとんどのようだった。

鉄道廃線跡がブームになったのは、鉄道ファンだけでなく一般の人が動いたからだったが、ウォーキングなどの日常の趣味と鉄道への興味が結びつく接点を見つけるのは難しいのではないか。

柳澤 美樹子 りゅう文章工房代表

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やなぎさわ みきこ / Mikiko Yanagisawa

「旅・食・人」をテーマとした、著述・編集業。まちづくりや交通、伝統食、神社などに関心が深い。健康・医療を中心に、インタビューなども手がける。信州、金沢、伊勢・志摩をはじめとした地域ガイド、鉄道や生活文化などを取材・執筆。著書に『鉄道廃線跡を歩く』シリーズ、『達人に学ぶ鉄道資料整理術』など。

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