ソフトバンク、携帯ショップ強制閉店の非情 ルール運用が「優越的地位の濫用」との指摘も

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販売店に課している閉店ルールは優越的地位の濫用に当たるのではないのか。ソフトバンクに尋ねると、「機密事項や営業戦略に関わるため、各種資料や質問状に記載いただいた内容について、事実関係の有無を問わず、詳細のご説明は差し控えさせていただきます。なお、本件に関わらず各種施策は、社内弁護士や顧問法律事務所に確認のうえ実施しています」(広報室)との回答だった。

ソフトバンクには店舗評価のほかに「オーナー評価」という指標もある。これはオーナーが運営する店舗全体の成績のほか、運営規模などさまざまな項目に基づいて決まっている。店舗評価と同様、S、A、B、C、Dの5段階でランク分けされている。店舗評価がSでもオーナー評価が低いとソフトバンクから支払われるインセンティブ(手数料や報奨金)が少なくなる。

以下は冒頭のソフトバンク担当部長と販売店オーナーとの別のやり取りだ。

ソフトバンク担当部長:オーナー評価Bだとどの企業も今、赤字になっていて、継続運営は難しいということで他社に譲渡いただく商談をさせていただいています。オーナー評価Bだと今後、儲けさせることができないからです。

販売店オーナー:Bで、儲からないですか?

ソフトバンク担当部長:儲からないです。

販売店オーナー:S、A以外はもう、死ねということですか?

ソフトバンク担当部長:「死ね」とは言わないですけれども、うちの事業ではA以上をとっていただかなければ、儲からない形になります。

6割近いオーナーが消える?

このやり取りの中で、ソフトバンクの担当部長は「B以下のオーナーが全体の約6割」とも話している。そこと「他社への譲渡」について商談しているのであれば、成績上位の4割のオーナー(評価がSかA)に販売店運営の集約を図っているということになる。野村総研の北氏はこうした動きについて、「ソフトバンクは今後1年以内に販売店の整理・再編にメドをつけようとしているようだ」と見る。

同業他社のNTTドコモやKDDIもこれまで販売店の整理・再編を推し進めてきた。それは、「ドコモは20年、KDDIは10年がかりの取り組みだ」(北氏)。ソフトバンクは携帯事業で数千億円規模の利益を毎期上げている。B評価のオーナーでも儲からないような状態にするのではなく、販売店に対する利益の分配を考えるべきだろう。

ソフトバンクは「店舗の閉店につきましては、一方的に行うものではなく、当社と店舗側との協議のうえで進めさせていただいています」(広報室)と言う。だが、冒頭のソフトバンク担当部長との会話記録からは、一方的に決めたルールに機械的に当てはめて、閉店を勧告しているようにしか見えない。

前出の中村弁護士は「閉店以外の選択肢を与えていないので明らかな強制だ。仮に販売店の承諾を取ったとしても、それも承諾と称する強制にあたる。ソフトバンクは、販売店が文句を言えない立場に付け込んでいる」と批判する。はたして、D評価が3回で”アウト”という閉店ルールの運用をどこまで続けるのだろうか。

山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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奥田 貫 東洋経済 記者

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おくだ とおる / Toru Okuda

神奈川県横浜市出身。横浜緑ヶ丘高校、早稲田大学法学部卒業後、朝日新聞社に入り経済部で民間企業や省庁などの取材を担当。2018年1月に東洋経済新報社に入社。

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