新型コロナウイルスが猛威をふるう中国では、異例の春節(旧正月)期間となった。人々は感染の恐れから外出を控え、親戚一同が集まって新年のあいさつをすることさえ難しかった。
今回の騒動は17年前のSARS問題を彷彿とさせるが、当時と異なるのはテクノロジーの進歩だ。ネガティブな側面としては、SNSの普及によってフェイクニュースが拡散しやすくなった。「中国茶や漢方薬、子どもの尿にもウイルス抑制効果がある」といった虚偽の情報が絶えず出回っている。
一方、テクノロジーのポジティブな側面も注目を集めている。AIやロボットなど、デジタル技術の進化を背景に、中国テック企業の活躍が、感染の拡大防止に一役買いつつあるのだ。
ファーウェイが病院に5G環境を提供
新型肺炎の震源地である武漢市では、わずか10日間ほどで専門病院の「火神山病院」が完成し、話題になった。通信機器大手のファーウェイ(華為)は緊急対応チームを立ち上げ、同病院に5Gネットワークを速やかに設置。それをベースに、遠隔医療環境を整えた。
ファーウェイのみならず、新型肺炎の流行を終息させるために、中国のテック企業は「科技向善(ソーシャルグッドのためのテクノロジー)」を標榜し、それぞれの強みを生かした取り組みを相次いで打ち出している。
検索ポータル最大手のバイドゥ(百度)が手がける地図サービス「百度地図」は、ビッグデータ分析の技術を活用。武漢が封鎖される前に、武漢から他地域への人々の移動状況を明らかにし、初期の感染拡大の範囲確定に貢献した。
SNS大手のテンセント(騰訊)や、動画SNSの「TikTok」、「快手(クアイショウ)」などは新型肺炎に関する特設ページを設け、感染情報をはじめ、予防や治療の知識をリアルタイムで提供。フェイクニュースの真偽判定などを通じて、人々に冷静な行動を呼びかけている。
さらに、テンセントは10億人超のユーザーを抱えるSNSアプリの「微信(ウィーチャット)」において、ユーザーが感染したかもしれないと思った際に、対応病院にすぐ行けるように誘導するサービスをリリースした。
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