日産「セレナ」発売から3年でも売れ続ける理由 リーフで培った電動化技術が独自の魅力に

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5ナンバーミニバンのEV化やプラグインハイブリッド(PHEV)化はもちろんだが、例えば、リーフの「プロパイロット パーキング」がセレナにも装備されれば、白線の引かれた駐車場なら、縦列でも並列でも自動で駐車させることができる。女性ドライバーなどからは、「駐車だけでも自動でやってくれるクルマがあれば欲しい」と切実な話を耳にする。

プロパイロット パーキングの操作は実に簡単で、モーター走行であるがゆえに、前進も後退も、ハンドル操作もすべて自動で行い、駐車を済ませると自動的にパーキング(P)にシフトされるという具合だ。

モーター走行を生かしたユニバーサルデザインへ

またe‐POWERは、福祉車両においても独自の強みを発揮する。

オーテックジャパンで製作される車椅子仕様の福祉車両の場合、e‐POWERであることによって、車椅子を乗せやすい低床でありながら、EV走行させることで静かに住宅地へと近づけるのだ。EVほどバッテリー搭載量が多くないから、車椅子仕様も容易に作れるのである。

オーテックジャパン扱いとなる福祉車両「ライフケアビークル(LV)」も複数用意(写真:日産自動車)

またEV走行ができれば、屋内にクルマごと乗り込むことだって不可能ではない。高齢者や障害が重篤な状態の際、施設などとの連携を図っての屋内への乗り入れは、有効な手段の1つとなるだろう。

なお、3列目シートを折りたたんで車椅子を載せる際にも、窓から外の景色を眺められる収納方式により、セレナの3列目席は閉塞感を薄らいでもいる。

高齢化社会を迎える日本の5ナンバーミニバンとして、モーター走行を生かした福祉車両の充実が、消費者の信頼や期待をさらに高めていくことになるだろう。

それはまた、単に標準車と福祉車両という区別ではなく、セレナ自体が福祉を視野に入れたユニバーサルデザインを進化させることで、世代を超えた家族の絆の結びつきをいっそう強めていく車種となることを期待させるのである。

御堀 直嗣 モータージャーナリスト

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みほり なおつぐ / Naotsugu Mihori

1955年、東京都生まれ。玉川大学工学部卒業。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。

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