異業種コラボ「現代版WiLL」は成功するのか ダイキンなど15社が参加、丸の内で実証実験

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コワーキングスペースでは気分転換にビールも自由に飲める。アサヒビールは独自開発した専用サーバーを設置し、好みのアルコール度数や味などをカスタマイズできる実証実験を行っている。今後はビジネスパーソンの行動や表情、脈拍などをセンサーで読み取り、「酔いの見える化」も目指す。今回から参加したモンデリーズの担当者は「職場でガムはNGという会社もあるが、ガムを噛むメリットを検証・発信していきたい」と話す。

蔦屋書店がプロデュースした図書コーナーもある(記者撮影)

各社がpoint 0に参加することで目指すのは、1社では気づかない新規事業のためのヒントを得ることだ。工場訪問や学生への合同説明会イベントを開催したり、法務担当者の交流会などを実施するのもそのためだ。将来的には単純なモノ売りからサービスを軸にした提案ビジネスへの転換が求められており、未来のオフィス空間をテーマに異業種でさまざまな連携を模索している。

2月3日に関係者向けに開催したカンファレンスでは、「オープンイノベーションによる新たな価値を作っていこう」と改めてPoint 0開設の意義を確認。石原代表は「『各メーカーによる個別提案ではなく、異業種が集まったpoint 0からの独創性ある空間プロデュースの提案が欲しい』という要望や成果が出始めている」と強調する。

「現代版WiLL」は復活するのか

過去にあった異業種コラボの例といえば、2000年代前半に展開されていた「WiLL」プロジェクトが有名だ。トヨタ自動車が主導してスタートし、花王やアサヒビール、近畿日本ツーリスト、コクヨなどが参画。商品のすべてが「WiLL」のブランド名とオレンジ色のロゴを使い、20~30代の若者消費を獲得しようとした。

消費にこだわりがある世代へのアプローチを狙い、各社がマーケティングの合同調査に乗り出したが、WiLLブランドは失敗に終わったと評価されている。石原代表は「WiLLは各社のエゴがまだ強い時代で失敗したと思う。ただ、今はデジタルが大きな流れとなり、各社ともオープンイノベーションをしないと生き残れなくなっている」と指摘。WiLLとは時代背景が違うとの認識だ。

point 0に参画しているある企業の担当者は「point 0に参画していること自体、取引先などから『面白いことやっている会社だね』と高い評価を受けている」と話すが、収益モデルを確立するのはこれからだ。はたして「現代版WiLL」は新しいビジネスを生み出せるのだろうか。

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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