エネルギー基本計画案は矛盾だらけ 原発の高いコストとリスクを軽視

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再エネに関しても、姿勢は曖昧だ。計画案では「13年から3年程度、導入を最大限加速していき、その後も積極的に推進していく」とある。だが、再エネの問題点も数多く指摘しており、国民負担の観点から固定価格買取制度(FIT)を見直すとも書かれている。「再エネを本気で大量導入していくつもりなのか、それとも再エネには頼れないからほどほどにしていくのか、わかりにくい書きぶりになっている」(高橋氏)。

 確かに、FITによる電力会社の再エネ買い取り費用が賦課金として電力料金に上乗せされ、国民負担(13年度は標準家庭で月額120円程度)が増えてはいる。一部には、FITで先行(2000年に導入)したドイツにおいて、再エネの発電量比率が2割を超えた反面、標準家庭の賦課金が月額約2400円(14年)と高騰していることから、日本も二の舞いになるとの懸念が喧伝される。

 だが、高橋氏はこう解説する。「FITを続ける以上、賦課金が年々上がるのは当然だ。ただ、日本でドイツと同様に上がるとは考えにくい。ドイツは14年前の太陽光パネルなどの価格(発電量当たりの単価)がまだ高い時代からFITを始めたので買い取り価格が高くついたが、今やパネル価格は2分の1、3分の1に大きく下がっている。今後も再エネの技術革新が進むにつれ、買い取り価格も適切なレベルまで下げられていく。ドイツなどが頑張ってくれたおかげで、日本は後発のメリットを享受できるわけだ」。

 「長期的に腰を据えてやるなら、明確な目標量を入れるべきだ」と植田氏は主張する。ドイツでは全発電量に占める再エネ比率が23%(13年)に達しているが、ドイツ政府は20年には35%、30年には50%を目標に掲げている。政府が目標値をコミット(公約)しているからこそ、再エネ事業者はそれを前提に長期的な事業計画が立てられる。日本にはこうした目標値がない。計画案の文面からも、本当に前向きなのかが判然としない。

核燃料サイクル推進方針は変えず

一方、核燃料サイクル政策については、これまで通り推進を基本的方針として、プルサーマルの推進、六ヶ所再処理工場の竣工、MOX燃料加工工場の建設、むつ中間貯蔵施設の竣工等を進めるとしている。核燃料サイクルの中心と位置付けられてきた高速増殖炉もんじゅについては、「これまでの取組の反省や検証を踏まえ」、「徹底的な改革」を行うとし、前回の基本計画(10年6月に閣議決定)で掲げていた「2025年頃までの実証炉の実現、2050年より前の商業路の導入」という実用化の目標は取り下げた。ただ、白紙化や廃止ではなく、「もんじゅ研究計画に示された研究の成果をとりまとめることを目指し」、研究を継続する方針を示した。

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