台湾で近年増える若手作家のオリジナル絵本 絵本というジャンルが生まれたのは30年前

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日本とは違う台湾の絵本事情とは?(撮影:若木信吾)

台湾の誠品書店の絵本コーナーには、日本の書店と同様、色とりどりの絵本が並んでいる。だが、書架に近づいてみると、その多くが欧米や日本作品の翻訳版であることに気づくだろう。

絵本専門の独立書店「花栗鼠絵本館」(シマリス絵本館台北・大安区)に行ってみても、店頭の目立つ場所に面陳されているのは、『かいじゅうたちのいるところ』『すてきな三にんぐみ』などの欧米のロングセラー作品や、いわいとしお、五味太郎、長谷川義史、工藤ノリコなど、日本の絵本作家の翻訳書だ。もちろん、台湾作家の絵本のコーナーもあるが、割合としては圧倒的に翻訳書が多い。

台湾における「絵本」の歴史は浅い

実は、台湾における「絵本」の歴史は浅い。1970年代前半に台北で生まれ育った筆者が子供のころ、子供が読む絵のついている本と言えば、「児童百科」くらいで、絵本というものはなかった。では、いつから台湾の書店に「絵本」が登場し、現在のようにポピュラーになったのか?

『媽媽是一朵雲』(仮題・ママはそらのくも)。文・海狗房東(ハイゴゥファントン)、絵・林小杯、巴巴文化。母が亡くなって落ちこんでいるカエルはある日、雲にママを見た。自由なタッチの絵とリズム感よい文で、子供の繊細な感情をつかむ一冊(写真:巴巴文化)

きっかけは、1990年前後、誠品書店が敦南店と天母店に、海外から輸入した数々の絵本を揃えた「絵本コーナー」をオープンさせたことだ。ここで、たくさんの読者が「絵本」というものに触れ、その楽しさを知ったのである。

絵本というジャンル確立のスタートは遅かった台湾だが、現在では、台湾の各出版社も積極的に絵本を刊行している。また、翻訳作品だけでなく、台湾作家のオリジナル作品を出すことが増えた。台湾オリジナルの絵本には、台湾の民俗文化や歴史、各地の郷土文化、そして台湾の自然環境問題など、ローカル要素に着目したものも多い。

本記事は『東京人』2020年3月号(2月3日発売)より一部を編集して転載しています(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

作家としては、現在、頼馬(ライ・マー)や、郝廣才(ハオ・グァンツァイ、絵本専門出版社・格林文化の社長でもある)などのベテラン作家の他、たくさんの若手絵本作家や、絵本のイラストを描くイラストレーターが活躍している。

若手作家の中で、筆者が特に注目しているのは、林小杯(リン・シヤオペイ)の他、李瑾倫(リー・チンルン)、劉旭恭(リウ・シユーゴン)、陳致元(チエン・ジーユエン)、鄒駿昇(ゾウ・ジユンシヨン)などだ。また日本と同様、台湾でも、最近「大人が読む絵本」が出現している。

日本で「台湾の絵本作家」としてまず名前の挙がる幾米(ジミー)の作品は、そもそも大人の読者向けのものだ。言葉が読めなくても、イラストや雰囲気を楽しめるのが、絵本の良いところ。旅行に行った際には、台湾オリジナルの絵本に着目し、その地への理解を深める一助にしてはどうだろうか。

(文/太台本屋 tai-tai books)

《PROFILE》
太台本屋 tai-tai books(たいたいぶっくす)/2018年より、台湾の本や書店に関する情報発信、版権仲介、関連イベントなどの活動を行うユニット。第66回産経児童出版文化賞翻訳作品賞を受賞した台湾の絵本、『カタカタカタ おばあちゃんのたからもの』(林小杯、ほるぷ出版)などを日本に紹介。
「東京人」編集部
とうきょうじんへんしゅうぶ / Tokyojin

都市出版が毎月3日に発行する1986年創刊の月刊誌です。「都市を味わい、都市を批評し、都市を創る」をキャッチフレーズに、歴史・文化・風俗・建築・文学など、都市文化の新たな相貌を照らし出します。

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