中国「パサート・ショック」は日系車に追い風か VWが中国事業を拡大する中、品質問題が露呈

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近年、中国における中間所得層の増加や消費嗜好の変化に伴い、かつての大量生産・マーケティング強化・大量販売といった欧米系企業のビジネスモデルでは差別化がしにくくなり、収益力の低下が見られた。

日本企業については、マーケティング力で欧米企業に見劣りする面もあるものの、中国消費者のニーズが廉価商品からミドル・ハイエンド商品へシフトし始め、日本的な品質のよさが受け入れられるようになっている。

長年中国市場を深耕してきたVWは、高い危機対応能力を発揮することで、これまでの不祥事が同社の市場優位に与える影響は限定的であった。しかし今回の「パサート・ショック」を機に、「モノ作りのこだわり・高品質」の代名詞であるドイツ車に対する中国消費者の信頼度は大きく変化している。

またVWに限らず、ドイツ高級車メーカーも品質問題を抱えている。国家市場監督管理総局が発表した2019年のリコール台数を見ると、独系車は最も多く全体の49.4%を占め、とくにBMWとベンツはそれぞれ117万台、101万台でリコール企業上位2位を占めている。

中国新車市場は調整期に

一方、中国で日系車は、軽量化ボディーで衝突に弱いなどの安全性の懸念などにより、欧米系ブランド車とのイメージギャップに長年苦しめられてきたが、ここに至ってクルマの安全性や省エネ性能が評価されるようになってきている。

中国新車市場は2019年に2年連続でマイナス成長となり調整期に突入した。2020年は新型肺炎の感染拡大を受け、新車販売の低迷が続くことが予測される。来るべき自動車メーカー間の熾烈な競争を予感させる中、今後日系自動車メーカーにとっては、消費者ニーズの多様化を踏まえ、適切なマーケティング戦略を構築してターゲットを絞りこみ、着実に「日本車のファン」を増やすことが重要である。

湯 進 みずほ銀行ビジネスソリューション部 上席主任研究員、上海工程技術大学客員教授

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タン ジン / Tang Jin

みずほ銀行で自動車・エレクトロニック産業を中心とした中国の産業経済についての調査業務を経て、日本・中国自動車業界の知見を活用した日系自動車関連の中国事業を支援。現場主義を掲げる産業エコノミストとして中国自動車産業の生の情報を継続的に発信。中央大学兼任教員、専修大学客員研究員を歴任。『中国のCASE革命 2035年のモビリティ未来図』(日本経済新聞出版、2021年)など著書・論文多数。(論考はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)

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