人を「ハーフ」と呼ぶ人が無邪気にしている差別 日本が多様性を受け入れる前にすべきこと

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そのような状況で「かわいそう」と言うのは同情だ。一方で共感とは、誰かがほかの人間を冷たく痛めつけていると思うと、自分の心も痛むことだ。同情すると多少は自由な人間になれるかもしれないが、共感すれば許しがたいことを許してしまう態度から自由になれるのだ。同情は屈辱と自分の心との間に距離を置くが、共感は心を開いて屈辱を受け入れる。

逆に、マイノリティー(人種やそのほかの種類のマイノリティー)がマジョリティーに共感するのはさほど難しくない。実際問題として、何らかの形で社会に同化するには共感せざるをえないからだ。

多様性の受容は労働力不足への対処とは違う

「より優れた」社会を知るよう強いられ、時には中にいる人たちよりもその社会に詳しくなったりする。毎日、日本人に囲まれていると、知り合って仲良くなった日本人の顔や心の中に、自分自身だけでなく、これまでに出会って愛したあらゆる人種のすべての人たちを見いだす機会が数えきれないほどある。違うのは言語と肌の色だけだ。

これは、ほとんどの日本人が決して得られない強みであることはわかっている。しかし、コンブさんのような人たちが、1歩踏み出したことによってパーティーに参加していたミックスの女性の命は救われたかもしれない。どれだけ純粋な褒め言葉だったとしても、「かっこいい、だって私たちとは違うから」と言われた彼女は、必死で聞かなかったふりをしたかもしれないのだから。

もし麻生さんに耳を貸してもらえるなら、多様性の受容とは、単に人口減少や労働力不足に対処するのとは違う、と言いたい。それは、ミックスや非日本人でありながら、この国を何の見返りも求めず愛してやまない人材を認めることである。

彼らは社会の中での価値を認められれば、意気揚々と全身全霊を投げうって国を支えるだろう。それが実現すれば、日本に今よりもはるかにすばらしい社会が生まれるだろう。

バイエ・マクニール 作家

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Baye McNeil

2004年来日。作家として日本での生活に関して2作品上梓したほか、ジャパン・タイムズ紙のコラムニストとして、日本に住むアフリカ系の人々の生活について執筆。また、日本における人種や多様化問題についての講演やワークショップも行っている。ジャズと映画、そしてラーメンをこよなく愛する。現在、第1作を翻訳中。

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