グレタへの脚光「世界の終わり」煽る空気のワナ 不安・不満募る人を大量に生み出し食いものに

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これまでも終末論ムーブメントというのは幾度となくあったが、「地球温暖化の危機」ではやたらとアクティブな反応が多いのが特徴だ。その背景には、気候変動の問題が心理的なストレスとなり、抑うつなどの症状として現れる「環境不安」「エコ不安症」があるとされている。

確かに「地球温暖化の危機」は、「巨大隕石の衝突」や「核戦争」などの非日常的な次元にある破局と異なり、巨大台風や洪水、熱波や干ばつなどの身近な出来事の延長線上にある破局といえる。しかも、多くの科学者が支持する国際的な枠組みが警鐘を鳴らしていることが、最悪の事態としての「世界の終わり」に信憑性を与えている。かく言うグレタさんも自身がうつ状態になった一因として気候変動の問題を挙げている。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の一連の報告書によると、早ければ2040年(わずか20年後!)に“大惨事”が起こると警告。産業革命以前に比べて地球の気温が1.5℃上昇した場合、世界は大規模な食糧危機や山火事に見舞われ、大量のサンゴ礁が消滅すると記している。このような破滅的なシナリオに頻出する「不可逆的な変化」「臨界点」という文言が「終末的な状況」を想起させて余りあるのだ。

現実味のある「世界の終わり」は「温暖化の危機」に

グレタさんが「気候危機って、未来を修復できない全面核戦争みたいなもの」(マレーナ・エルンマン、グレタ・トゥーンベリ『グレタ  たったひとりのストライキ』(羽根由訳、海と月社))と断言したとおり、今や最も現実味のある「世界の終わり」は「地球温暖化の危機」となっているのである。

グレタさんは、環境保護活動家として華々しいデビューを飾り、国際的な舞台でオーソライズされることによって、自らの「不安」を克服することができた面があるが、普通に生活している人々にはなかなか同じまねはできない。

前掲書には、発達障害を持つ2人の娘の子育てに悩む「壊れかけた家族」が「地球温暖化の危機」を共有し、ともに闘争することによって「再生」するプロセスが切々たる筆致でつづられている。例えば以下のくだり。

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