中年のひきこもり「年収1000万」でも危険な理由 「ひきこもり=怠け者」は間違ったイメージだ
非正規やアルバイトの方たちだけではなく、正社員の、それも1000万円プレイヤーであっても、今の世の中、いつなんどき解雇されるかわかりません。そして、いったん解雇されたら、とくに中高年の場合には、再就職先がなかなか見つけられないのが現状なのです。
Aさんのように数十社受けても不採用ばかりとなれば、よほど強靭な精神力の持ち主でない限りは、やがて傷つき、自信を失い、身も心も疲弊して、外へ出ていく気力が失せたとしても不思議ではないでしょう。
次に、私自身がカウンセリングさせていただいている40歳のUさんの事例を見ていきましょう。
【事例2──生きにくい世の中で心をすり減らし、ひきこもりに】
Uさんは生まれも育ちも東京23区内。小さな頃から内向的な性格でした。家では、1度決めたら譲らない、頑固な面もありましたが、小学校、中学校では大きなトラブルを起こすことはなかったそうです。学校での成績はつねに上位で、勉強は得意でした。
私立の高校に進学した後も成績は優秀。順調な学校生活を続けます。親しい友人はできないながら、いじめを受けるなどの深刻な問題はなく、無事に高校も卒業して大学に進学します。興味関心のあることについては1度で記憶できるなど、「地頭のよさ」が際立っていて、大学の4年間は専門の工学の勉強に没頭していたそうです。
就職活動では、就職氷河期の真っただ中だったことから、中小企業のエンジニアとして採用されるのがやっとでした。それでも、その小さな会社の社長がUさんを非常に気に入って、「仕事の能力は高いけれど、人付き合いは苦手なUさん」を穏やかに見守り続けてくれたそうです。
きっかけは「社長の交代」
ところが、社長が息子に経営をバトンタッチしたことが、Uさんの順調だった会社生活に暗い影を落とすことになります。息子は不況のあおりを受けて、人員整理を始めます。
優秀なUさんはリストラの対象にはならなかったのですが、減った社員の分の仕事がUさんに回ってくるようになりました。
Uさんの仕事は増え、「シングルタスク」から「マルチタスク」となります。Uさんにとって、マルチタスク化した仕事は苦痛でならなかったそうで、この頃から、家でも仕事の愚痴が増え、言いようのない苦しみがUさんをむしばんでいきました。
さらに、つらいことは続きます。仲がよかった母親の他界です。Uさんはショックを受けますが、落ち込んでばかりはいられません。父子ふたりが食べていくために、なんとか頑張ってつらくても働き続けました。
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