中年のひきこもり「年収1000万」でも危険な理由 「ひきこもり=怠け者」は間違ったイメージだ

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【事例1──職を失ってひきこもってしまった1000万円プレイヤー】

Aさんは外資系企業のエンジニアとして働き、年収は1000万円超え。華麗なる1000万円プレイヤーで、関東地方にマンションを購入し、独り暮らしをしていました。

本人いわく「父親がロクデナシで、子どもの頃から貧乏だった」。母親がパートをして一家の生活を支え、彼が学校を卒業できたのも母親のおかげでした。自分が稼げるようになってからは、苦労をかけた母親へ20年ものあいだ、仕送りを続けてきました。

ところが、今から6年前にAさんは突如、会社を解雇されます。解雇から1年後、再就職先を探し始めた彼の前に「50歳の壁」が立ちはだかります。再就職先は見つからず、気がつけば不採用の数は数十社にのぼっていました。

仕事は見つからず、蓄えは減り続け、焦りと不安は募るばかり。中国などでの求人はありましたが、老齢の母親を置いてはいけず諦めたそうです。そのうち、友人との連絡も途絶えがちになっていきます。

いつしか気力を失い、就職を諦めてしまい、そして、お金を使わないようにと、家にひきこもる時間がしだいに長くなっていったというのです……。

母親の遺体とともに1カ月以上を過ごす

そんな姿を見かねた母親に促されて、Aさんは、実家に帰ります。収入は母親の月8万5000円の年金のみ。年金受給日の前の数日間は、ふたりして米とみそだけで飢えをしのいだといいます。

そして、ある日、気がついたら、母親が横になったまま動かなくなっていたのです。息子であるAさんは現実を受け入れることができないまま、茫然とするばかりだったそうです。手元に残っていた現金は5万円ほどで、母の葬儀を出したら、自分が餓死するかもしれません。冷静に考えられなくなっていたAさんは死亡届を出すことなく、冒頭で述べたように、母親の遺体と共に1カ月以上を過ごしたというのです。

その後、所有していたマンションが売却できたことで、葬儀費用のメドがたつと、Aさんは自ら警察に母親の死を届け出て、逮捕されて、裁判で執行猶予の有罪判決を受けました。

NHKニュースのインタビューに対してAさんは、「……これまで親孝行をしてきたつもりですが、最後の最後にこんなことになってしまったことが悔しいですし、自分が情けないです」。

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