「攻めたい社長」と「守りたい経理」の残念な関係 経理担当とこんなやり取りしていませんか?
経理の仕事の進め方は、どこか職人に近いところがあります。まず、高度な専門知識や技術を必要とすること。チームワークというより、1人黙々と自分の仕事をこなすこと。正確性やミスのない「完璧さ」を目指すところ。そして、担当者それぞれに「こうでなければいけない」という自分の「流儀」があること。培ってきた「自分のやり方」こそが正しいと信じる頑固さも、職人に似ているといえます。
職人なら、それぞれに磨き上げた「自分のやり方」は強みになるかもしれません。また、有能な社員であれば、「自分のやり方で全部1人でやったほうが速い」ということもあるでしょう。けれども、会社という組織の中で「自分のやり方」に固執されると、いろいろ困ったことが出てきます。
「自分のやり方」で、すべて1人でやっている「職人」は替えが利かず、チームで動けないのです。例えば、職人が休みのとき、引き継ぎのときなど、さまざまな場面で不都合が生じてしまいます。
経理のブラックボックス化
そうした状態を私は「経理のブラックボックス化」と呼んでいます。
経理では、仕訳の方法、摘要欄の書き方、資料の作り方など、「自分のやり方」がみんな違う、ということが時に見られます。一つひとつは小さなことでも、それが積み上がっていくと、その人にしかわからない、「ブラックボックス」となってしまいます。
極端な例では、同じ経理の部署にいるのに、Aさんは「クレジットカードで支払った経費は、明細書を見て入力する」、Bさんは「クレジットカードで支払った経費は、領収書を見て入力する」と、やり方が違うのです。
これでは何かあったときに、担当者以外の人間が仕事をカバーすることができません。誰かが辞めたり、長期に休むことになったりすると、ほかの人にはやり方がわからず、その人が担当していた仕事が回らなくなるというリスクがつねにつきまといます。
会計処理はビジネスの写し鏡です。したがって、誰が作っても同じ「1つの答え」になりますが、そこに至るプロセスは人によりさまざまです。やり方が統一されず、何が効率的かもわからない。その結果、たくさんの無駄が生まれてしまうのです。
経理のブラックボックス化の弊害はまだあります。ほかの誰にもわからない「自分のやり方」でブラックボックスになってしまっている経理は、たとえ経営者が「この作業にどうして10時間もかかるの?」「もっと効率的なやり方はないの?」「あの確認は本当に必要なのか?」と疑問に思っても、経理担当者から「私しかこのことはわかりませんよね。こうでないとダメなんです」と言われると、それ以上、何も言えなくなってしまいます。
「辞められたら、経理が大混乱となる」という不安で、経理には強く出られないという社長も少なくないようです。しかし、経理の仕事がブラックボックス化しているために、本当なら1日でできる仕事に3日かけていても誰も気がつけない、というのでは困ります。「よくわからないから」とブラックボックス化された経理を放置していたために、とんでもない事態を招いてしまうこともあるのです。
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