「攻めたい社長」と「守りたい経理」の残念な関係 経理担当とこんなやり取りしていませんか?
「経理は難しい」「数字はよくわからない」という社長にとって経理は、会社のすべての数字を任せている存在です。そのため、社長の唯一の弱点にもなり、見方によっては社長より優位に立っている存在とも言えます。例えば、こんなやりとりが経理との間で交わされたことはありませんか? あるいは、もしあなたが経理だとしたら、こんなふうに答えてはいないでしょうか?
社長:「新しいプロジェクトを始めたいんだけど、プロジェクトの経理まわりの試算をお願いできるかな?」
経理:「今の人数では無理です。増員して仕事を引き継がないと、とてもできません。新しい人が入社したとして、引き継ぎ期間が半年は必要なので、10カ月後なら可能です」
社長:「月次決算をもう少し早くしたいんだけど、どのくらいでできるかな?」
経理:「1カ月はかかります」
社長:「もっと早くできない?」
経理:「まず、請求書の回収に○日くらいかかり、次に給与の確定に○日、そして店舗からの報告が上がってくるのに○日はかかります。これ以上は早くできません」
社長:「クラウドとかネットバンキングを使ってみたいんだけど」
経理:「自動化しても結局、確認をしなければならないので、効率は上がりません。今のやり方がいちばんいいと思います」
経理の厚い壁に阻まれる
こんな調子で、社長が何かやりたいと言っても、経理の厚い壁に阻まれてしまうという話をよく聞きます。
会社のトップなのですから「そんなこと言わないで、やってくれよ」と言えそうなものですが、経理の仕事や数字のことがよくわからないので、及び腰になってしまう人もいるようです。「すべてを任せている経理がそう言うなら、無理なんだろう」とそれ以上強く出られず、引き下がってしまうことも多いようです。
たしかに、自分が専門ではない領域で「これでできるはずだから」と強硬に進めるのは、思い切りが必要だと思います。しかし、経理は本当に「できない」から「無理です」と言っているのでしょうか? もし、「できるけどやりたくない」「完璧にできる自信がない」「面倒くさい」といった理由で「無理」と言っているのだとしたら……。
経理のそのひと言で会社は大きなチャンスを逃してしまっているかもしれません。
経理の仕事は、ミスがなくて当たり前の世界です。ノーミスの状態を保とうと思えば、「現状維持が最も安全」ということになります。
今のやり方で正確に数字を出せているのに、違うやり方に変えてしまったら、正しいやり方であることを検証する必要があるうえに、前回と結果が同じかどうか確認する作業も必要で、作業は倍になります。だから、今のやり方を変えるような新しい提案は歓迎しない。それが、経理の基本的なマインドなのです。
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