中小企業は本当に復活したのか?

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縮小


打開策はあるのか?

 どうすれば、こうした状況を打破できるのでしょうか?私は、中小企業のための「株式市場」を新たに設けるべきだと考えます。現在、わが国には、マザーズ、ヘラクレス(大阪)、Qボード(福岡)、セントレックス(名古屋)、アンビシャス(札幌)などの新興企業用の市場がありますが、正直言って、マザーズとヘラクレス以外は、機能していないと思います。

 それぞれの地域の市場が、地域の中小企業に資金を提供する仕組みを作らなければなりません。ちなみに、セントレックスの上場企業リストを見ると「東京圏の企業」が多くびっくりしました。下図のように、アメリカの株式市場の構造を見ると、企業の規模が小さくなるほど、上場している数が多くなっていることが理解できます。

 わが国も、地方の株式市場運営法人の「審査能力」と地方の証券会社の「上場支援能力」を向上させ、地方の企業が地元の株式市場で資金を調達する仕組みを作るべきである、というのが私の主張です。

会社のために借金する社長たち

 株式による資金調達には、銀行融資にはない数々のメリットがあります。まず、株式からの資金調達は、投資になります。これは融資と違い、会社が失敗した場合に返す必要がありません。この10年、銀行の融資が減るとともに破産数も激増しています。1996年に6万件だった破産数は、1999年に12万件に倍増し、2003年にはついに25万件にまで膨れ上がっています。このほとんどが中小企業です。私の知り合いも倒産の憂き目に会っています。借金に追われ、お金を無心した家族や親戚からは罵られ、それは本当に大変でした。

 なぜ、こんな目にあうのか?それは、「会社への融資が個人の保証」で行われるからです。私の知り合いの中小企業の社長は、ほぼ例外なく「会社のため個人で借金」を抱えています。売り上げが100億円を超える企業だと、そこの社長は数十億円の借金を抱えていることも多いようです。そして会社が倒産すれば、その借金は社長個人が返済しないといけないのです。つまり全てを失います。株式市場からの投資であれば、こういった悲劇を止めることができるのです。

経営と所有を分離するメリット 

 また、上場すれば、「経営と所有を分離」できます。今、中小企業の経営者の多くが、会社の継承に困っています。その大きな理由のひとつに、会社を継承する際に、巨大な借金も引きつがないといけないということがあります。赤の他人では、巨額の借金を抱えてまで社長を引き継ぎません。結局最後は、巨額の相続税とともに家族が引き継ぐことになるのが通例です。株式を上場すれば、経営と所有が分離できますので、家族以外の人を経営者として雇うことができるようになります。私は、中小企業用の株式市場は、「中小企業の事業継承のため」にも必要だと思っています。

 金融庁のパンフレットを見ると、その6ページ目に「健全な中小企業や次代を担う新規産業等に対して必要な資金供給が円滑に行われるよう、金融の円滑を図り、国民経済の発展に資することを目指します」と書かれています。私は、「ちゃんと、がんばれ、金融庁」と強く思います。金融機関といった資金の供給者ばかりでなく、資金の需要者、つまり中小企業の状況もきちんと見てもらいたいものです。

藤末健三(ふじすえ・けんぞう)
早稲田大学環境総合研究センター客員教授。清華大学(北京)客員教授。参議院議員。1964年生まれ。86年東京工業大学を卒業後、通商産業省(現経済産業省)入省、環境基本法案の検討や産業競争力会議の事務局を担当する。94年にはマサチューセッツ工科大、ハーバード大から修士号取得。99年に霞ヶ関を飛び出し、東京大学講師に。東京大学助教授を経て現職。学術博士。プロボクサーライセンスをもつ2女1男の父。著書に『挑戦!20代起業の必勝ルール 』(河出書房新社)など

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