日経平均が米国株に比べ上昇しない本当の理由 本当に今の株価は「割安」と言えるのか?

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足元では、アメリカ株の高値更新を背景に、海外短期筋が日経先物を買い上げている。一方、国内投資家の現物株の買いが入りにくいので、結果としてNT倍率(日経平均÷TOPIX)が上昇している。また、日経平均採用銘柄が買われても、海外投資家の買いがあまり入らないマザーズ市場では、株価低迷の度合いが強い。

日本株の出遅れには確固たる理由がある

アメリカ株に対して日本株(日経平均株価)が劣後している点は、日経平均株価÷ニューヨークダウの比率に表れている。通貨の違いを解消するため、米ドル換算の日経平均をニューヨークダウで割った比率を見ると、長期的に2015年8月をピークとした低下傾向を覆すことができていないし、短期的には昨年12月半ばから低下に拍車がかかっている。

このため、アメリカの株価に対して日本株は割安感が強く出遅れているので、海外投資家が日本株を全体底上げ的に買ってくるのではないか、との声もある。しかしそうした見解については、筆者が接触している海外投資家は総じて否定的だ。主に聞こえてくるのは、「日本株が出遅れているのは、出遅れて当然という理由があるからであって、単に株価が劣後しているから買いだとは考えない」という答えだ。

その日本株が出遅れて当然、という要因としては、日本人は「少子高齢化で日本経済があまり成長しないからだろう」と考えてしまうのだが、それに同意する海外投資家は少ない。多くの海外投資家は「日本の企業経営に問題がある」と語る。経営が合議制で責任の所在があいまいで、リスクをとって攻めることをためらい、経営の方針転換にも時間がかかる、といったようなものだ。

もちろん、海外投資家は「すべての日本企業の経営がダメなままだ」とまでは考えていない。事業の選択や集中(事業売却やM&Aなど)、自己株買いや配当増による株主還元といった動きの積極化は、高く評価している。だが逆に言えば、そうした前向きな経営の変化が生じている企業の株は買えるが、そうでない企業は、いくら株価が安値に放置されていても、買う気はしない、ということだ。つまり、海外投資家の買いは選別的で、日本株の全体的な出遅れ修正は起こりにくいと言える。

こうした見解から、引き続き今後の株価については警戒的に見込む。では「今週から株価下落が本格化するのか?」と言えば、それはわからない。しかし大きな流れでは、上値が重くなり、いずれ反落色を強めよう。今週の日経平均株価は、2万3500~2万4100円を見込む。2018年10月の高値奪回は、どちらかと言えば難しいと考えている。

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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