岐路に立つOYO、急成長から一転「解約」へ 賃貸住宅のプラットフォーマーへの険しい道

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「好条件で物件を借りてくれる会社があるらしい」。さかのぼること2019年夏。OYOの存在が一部の不動産投資家の間で話題になりつつあった。物件の借り上げに際して、OYOが提示した賃料保証額が破格だったためだ。

OYOが採用するサブリースでは、入居者の募集や管理をOYOが担う代わりに、家賃から手数料を差し引いた額がオーナーに支払われる。ところが、OYOは物件によってはオーナー自ら入居者を募集する場合よりも高い金額を提示していた。駅徒歩15分以上や築30年超といった、競争力の劣る物件でも次々と借り上げていった。

借り上げ数がKPIに

なぜそこまでして規模拡大を急いだのか。OYO LIFEの山本竜馬・ヴァイスプレジデントは、「入居ニーズの分析と、OYO LIFEのサービスを認知させるため」と振り返る。営業現場でも物件の借り上げ数がKPI(重要業績評価指標)となり、周辺相場を無視したオーナーの言い値で保証賃料が決まった物件も少なくなかった。投資家にとっては降って湧いた「OYOバブル」だった。

山本氏の前職はアップルペイの統括責任者。OYOには不動産業以外の出身者も多い(記者撮影)

他方でOYOの破天荒な借り上げ姿勢は、一部の投資家の間でモラルハザードとも呼ぶべき事態も招いた。

ある投資用マンション業者の社長は、「駅距離のある郊外など、ウチで入居者が集められなかった物件は丸ごとOYOに投げた」と打ち明ける。別の業者では、自らがサブリースで借り上げた物件をさらにOYOへと貸し出していた。業者は入居者を募集する手間をOYOに押しつける一方で、賃料を中抜きした形だ。

市場原理を無視した借り上げを続けた結果、中にはほとんど入居者がつかなかった物件もあった。だがオーナーに賃料保証をしてしまっている以上、入居者がいなくても毎月決められた金額を払わなければいけない。積極的だった拡大機運はいつしかしぼみ、規模から採算重視へと舵を切らざるをえなくなった。現在OYOは新規の物件借り上げを停止している。

解約に踏み切った背景については、「入居者データが一定程度集まり、サービスの認知も進んできたため、規模を追う必要がなくなった。現在は物件の稼働率と顧客満足度をKPIに据えている」(山本氏)という。

昨年12月に発表されたZホールディングスとの合弁解消については、ヤフーの名を借りなくともOYOが客に受け入れられてきたことが理由だといい、物件稼働率の低迷によるものではないとした。解約件数についてはコメントを避けたが、解約を打診されたある投資家によれば、首都圏だけで数百件規模が候補として挙がっていたという。

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