「相鉄・JR直通線」お得なのはどこへ通勤する人? 東京方面でも定期代が安くなる目的地がある

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さて、どんな区間が使えるのかがわかったところで、やはりダイヤ乱れ時はどうなるのかという不安が払拭できなければ使う気にはならないだろう。問題は複数の路線系統で線路を共用している特性上、他の線区、列車の遅れや列車渋滞の影響を受ける可能性だ。

「羽沢横浜国大」行きを表示した相鉄12000系(編集部撮影)

その場合はどうなるか。JR線内で輸送障害が発生した場合、新宿行きは羽沢横浜国大で相鉄線方面へ折り返し運転、直通中止が西谷の手前で決まった場合は相鉄線横浜行きに変更になるだろう。実際、JR車両は相鉄線の横浜やいずみ野線湘南台へ営業運転で入った実績がある。また、埼京線が運転を見合わせた際、品川行きに変更された例もある。

反対に、相鉄線内で輸送障害が起きた場合はどうか。この場合は羽沢横浜国大や西谷でJR線方面へ折り返せるようになっている。だが、もしも羽沢横浜国大に入線できなかった場合は東海道貨物線を直進し、湘南ライナー用に造られたホームがある藤沢まで走らせる可能性もありそうだ。実際に、埼京線のE233系電車、相鉄の12000系電車の乗務員室内にある行先表示設定のリストには、1番下に藤沢行きの表記を見ることができる。

とりあえず、どこだかよくわからないトンネルの中で1~2時間も停車して「遭難新宿ライン」だった、なんてことにはならずに済みそうだ。

メリットを生かし切れていない

鳴り物入りで開業した相鉄・JR直通線だが、全体的にJR線内の運賃の高さでメリットを生かしきれていないというのが正直な印象である。相鉄としては小田急との競争が目的ではないだろうからいいかもしれないが、将来は運賃が安い東急直通に全部持っていかれる可能性が高いのではないだろうか。

そうなると困るのはJRである。最近、JR東日本は「どこまで、行けるか」というキャッチコピーでCMやポスターを作っているのだから、直通線の運賃値下げも「どこまで、行けるか」考えてもらいたい。直通になったとはいえ乗車距離も時間も長いので、値下げの減収分をいま流行りの有料着席列車の設定でカバーすることを考えてもいいかもしれない。

逆に都心から相鉄沿線へ来てもらう取り組みも重要ではないかと思う。相鉄・JR直通線開業記念PVのメイキング映像で「相鉄線沿線で行ってみたいところはありますか」と聞かれた二階堂ふみさんと染谷将太さんが「横浜のその先を開拓してみたいです」と具体的な地名を挙げずに回答をしている様子が印象的であった。

住む場所と免許更新(二俣川)に行くための路線から脱皮し、魅力度アップ&魅力どアップの合わせ技で沿線PRに励んでいただくことに期待したい。

北村 幸太郎 鉄道ジャーナリスト

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きたむら こうたろう / Koutaro Kitamura

1989年東京生まれ。2008年昭和鉄道高等学校運輸科卒業、2012年日本大学理工学部社会交通工学科マネジメントコース卒業。乗り鉄、ダイヤ鉄。学生時代は株式会社ライトレールにインターン生として同社の阿部等社長のもと、同社主催の「交通ビジネス塾」運営などに参加。

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